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わたしのカイロス 3 (BUNCH COMICS)

ツイッター上で友人がこの漫画についてつぶやいていたのを見たことをきっかけに、私はこの作品のことを知りました。

元々SF作品は好きで、WEB上でも序盤の話が読めるということで公式サイトへ読みに行き、たちまちそれの虜になってしまいました。

しかし第三巻で完結ということで、もっと続いて欲しいと寂しい気持ちになりながら、書店へこの本を買いに行きました。

あらすじ

主人公の少女、グラジオラスは家族を助けるために、罪人同士を戦わせる見世物になりながらも、仲間と共に懸命に戦いを乗り越えていました。

そんな中、彼女がこのような境遇となった原因となる男に再開。家族は既に殺した、お前は私の母になれ、など衝撃的な言葉を投げかけられます。

階級による差別から定められた理不尽な運命に抗い、強大な力に立ち向かうSFストーリー。それがいよいよクライマックスを迎えます。

感想

SFとしてとても面白いストーリー

絶望の底に突き落とされた主人公が、仲間を得てそれから立ち直り、強大な敵に立ち向かう。この話は、そんな王道のSF冒険譚です。この第三巻は最終巻であり、自分を辛い目にあわせた元凶との最終決戦が行われます。

様々な星、様々な街、様々な住民、そして様々なメカ。それらとの出会いと別れ、友情、愛、戦い、そして決着。SFとして必要なものが全て詰め込まれた、冒険にワクワクし、戦闘では手に汗握り、最後にはその結末に涙が頬を伝う、そんな素晴らしい物語でした。

補足として、ストーリーの中に様々な名作へのオマージュがあるのも、この話の一つの魅力となっています。詳しくは伏せますが、知っている人ならばあのSF作品を参考にしたな、と分かるような設定やキャラクターが多数あり、思わずニヤリとさせられてしまいました。

ストーリーは分かりやすくページも非常に読みやすい

SF漫画作品を描く作家さんというのは、溢れんばかりのリビドーをぶつけて自分の思う世界を再現しようとする方が多くいます。そのためシナリオの面でも絵の面でも、そこに含まれる情報の量があまりにも多く、分かりにくいような作品になってしまいがちです。

しかしわたしのカイロスは、ストーリーはかなり単純明快で、絵もそれほど細かく描き込まれてはおらず見やすいものとなっています。そのためSFがそれほど好きでない、難しい漫画を読むのは苦手なような人であっても手軽に楽しむことが可能です。

読者に分かりやすい漫画を描くというのは当たり前のことではあるのですが、SFはある意味、特に意味もないけれど存在しているような多数の背景設定や、宇宙船やロボットの描き込みによるメカの表現など、その分かりにくさも魅力であるために、どうしてもこういった作品は珍しいのです。

ストーリーに合った素晴らしいキャラクター達

この作品において、敵も味方も、それほど奇抜なキャラクターは登場しません。登場するのは、どちらかと言えばどこか別の作品でも見たような設定のキャラばかり。しかし、それがなぜだかとても魅力的に感じられてしまうのです。

理由は単に作者さんの絵が上手く、キャラが可愛く、格好よく、美しく描かれているというだけではありません。壮大な冒険譚でありながら、しかしまたコンパクトな物語でもあるこの作品。その規模と、奇をてらわず基本に忠実な登場人物達がマッチし、それぞれの魅力を高め合っているのです。

そしてそんな魅力的なキャラクター達ですが、その数が多すぎないというのもまたこの漫画の良いところです。敵も味方も極めて限られたキャラしか出てこないために、その分各キャラに割ける割合が増え、どのキャラも短い物語にもかかわらず非常に深く掘り下げられており感情移入することが可能となっています。

まとめ

この第三巻で、わたしのカイロスという物語は完結を迎えました。もっと続いて欲しかったという気持ちはありましたが、しかしその結末を読んで、これ以上ないベストな終わり方だと納得し、満足して本を閉じることができました。

私個人としては残念に思ってしまう漫画の短さですが、一方でこれから読む人にとっては非常にお勧めできるポイントにもなります。完成度が高くまた非常に読みやすいSF作品を、全三巻という短さによって、空いた時間などで気軽に読むことができてしまうのです。

さらに、物語は短く分かりやすいものではありますが、決してその内容の浅いものではありません。何度も読み直せば、そのたびに新しい発見がある、そんなSF作品の魅力をこの本もしっかり持っています。そして読み返す際にも、やはりその短さは手軽にそれが行え嬉しい点になるでしょう。

オススメ度:★★★★★★★★☆☆ ★8

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