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しおりを探すページたち(1) (百合姫コミックス)

『しおりを探すページたち』はTwitter上で百合作品をリサーチしている時にアンテナにひっかかった作品です。

様々な百合作品を手がける編集者さんの情報から興味を持ち、ゆりひめ@ピクシブで公開されている1話をチェックしました。

1話を読んだ時点で本能が『買い』だと叫んだので、素直に欲求に従いました。

あらすじ

中学三年生のちとせは隣町の図書館でアルバイトをしている冬歌に憧れの感情を抱いていました。

ある日を境に冬歌はアルバイトを休むようになり、ちとせは自分の気持ちが恋であったことに気付きます。

冬歌と同じ高校に入学したちとせは久しぶりに冬歌と対面することに成功しますが、態度の豹変に戸惑うことになるのです。

感想

本好きの理想を具現化したような冬歌のキャラ造形

『しおりを探すページたち』のキーになる人物は冬歌です。主人公のちとせに好意的で、非常に観察力が高く知的なお姉さんです。

色素が薄めでメガネが似合う美人で、本好きとこれでもかと本好きの理想を具現化したキャラクターであり、温和で優しい性格も魅力になっています。しかも、ちとせが借りようとしていた本をこっそり取り置きしてくれるなど完全に女神状態です。一部の層にドストライクなのは間違いありません。

しかし、第1話後半では久々に再開したちとせに対して冷たい態度をとるなど、クールでミステリアスなキャラに変貌するギャップを見せてくれます。何故そんなギャップが生じたのかが、この作品を読み解く鍵になります。身勝手ではなく、そういった態度をとる背景が存在することに気付くことができれば、より冬歌の感情に深みが出てきます。


引用元:しおりを探すページたち 1、くもすずめ、一迅社、初版、P8

それぞれの思いがすれ違う群像劇としての魅力

『しおりを探すページたち』はちとせと冬歌二人だけの物語ではなく、ちとせの親友である梨果子(りかこ)の思いも複雑に絡み合っています。梨果子はちとせに好意を寄せていて、冬歌に恋をしていることにも気付いています。

しかし、過去にちとせを傷つけた経験がある梨果子は、自分の思いを告げることによってちとせを再び傷つけることを恐れています。そのため、冬歌との仲を応援する道を選ぶのです。

ちとせとの過去も含め、梨果子のキャラクター描写にはかなりのページ数が割かれています。ちとせと冬歌二人だけで完結する物語ではなく、二人に関わるキャラクターの心理まで丹念に描いた群像劇としての魅力があるのです。


引用元:しおりを探すページたち 1、くもすずめ、一迅社、初版、P113

吹き出し

秘めた思いがあるからこそ、一人の時間が辛い時があります。

本好きの心に突き刺さる遊び心はカバー裏にも

本のカバーをめくる楽しみは、実際に本を購入した人ならではの魅力になっています。一方で、カバー裏の書下ろしなどは基本的にお金が出ないなどの業界事情があり、完全に作り手の遊び心とサービス精神にゆだねられる部分にもなっています。無いのが普通だからです。

ところが、たまに本編よりもカバー裏のおまけが面白い作品などもあるので始末に困ります。漫画家の個性がより強く出ることがあるため、それを目当てで本を購入する人が出るほど熱狂的なファンを生み出すこともあるのです。

『しおりを探すページたち』のカバー裏は……といえば、本好きの心を射止めるに十分なだけの殺傷力を持っています。論よりも証拠です。実際に撮影したものがこちらです。


引用元:しおりを探すページたち 1、くもすずめ、一迅社、初版

実際に本を購入された方は、是非裏返してみてください。裏返すとまた発見があります。

まとめ

『しおりを探すページたち』は少女たちの心の動きを丁寧に描写することに力を入れています。伏線は非常にわかりやすく、情報をもって読み返せばキャラクターたちの感情が矛盾なくつながるようになっています。

奇抜さなどを重視してキャラクターの言動や行動に矛盾が生じる漫画も珍しくないため、キャラクターに芯があって共感できることは大きな魅力です。一見矛盾が多いように見える冬歌の心の動きにも、ちとせに対する好意にも、明確な根拠があります。

また、キャラクター造形やカバー裏など、本好きの心に突き刺さる要素も多く、何はなくともこの本は見て欲しいと思わせるだけの力があります。ここまでストレートにハートを射抜かれた経験はなかなかなく、改めて物語は出会いだなぁと思ってしまいました。

オススメ度:★★★★★★★★★☆ ★9

月10冊程度、年間100冊超の漫画を読むフリーライター。非定期で友人と百合漫画を語る会を開きますが、ジャンルは不問で何でも読みます。

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