けものフレンズ ‐ようこそジャパリパークへ!‐ (1) (角川コミックス・エース)

けものフレンズ1巻は、漫画家の吉崎観音先生のデザインを機軸に、様々なメディア展開を行ったけものフレンズプロジェクトの1作品です。漫画版はフライ先生が作画を行い、企画・原案をけものフレンズプロジェクトがおこなうという形になっています。

大ヒットしたアニメに先駆けて公開した作品であり、アニメ版とは内容が異なる点がポイントになっています。当時公開されていたアプリなどと共通する部分が多く、人類とフレンズが共存している世界を描いているのが特徴になっています。

ジャパリパークの新人飼育員菜々と、サーバル、キタキツネといったフレンズを中心に物語が展開し、毎回のようにどったんばったん大騒ぎする内容になっています。

あらすじ

様々な動物が少女化したジャパリパークで働くことを夢見た菜々は、見事新人飼育員として働けることになります。

少女化した動物=フレンズを担当し、様々な身の回りの世話をすることになった菜々ですが、担当になったキタキツネは非常に自分勝手な性格で社会性のかけらもなく、毎回のごとくトラブルを起こす形になります。フレンズと人間との関係や違いに悩みながらも、菜々とキタキツネは絆を深めていくのです。

アニメ版のメインキャラであるサーバルはキタキツネの友達として登場しますが、出番は若干少なめです。また、フレンズは基本的にけものであるため、主に悩むのは人間である菜々であるのもポイントです。習性や感覚の違いからフレンズ同士の交流も振り回されたり振り回したりが通常になるため、コメディ色が強いのもポイントになっています。

感想

アニメとは違い、女の子同士の交流が主軸に

アニメと漫画版との違いは、萌えの追求度です。アニメ版はキャラクター性と動物としての習性などの情報をたくみに織り交ぜながら、セルリアンという謎の敵とのバトル要素を取り込んで進行していきます。しかし、漫画版の場合はセルリアンが登場せず、あくまで人間である菜々とフレンズたちの交流が主軸になっているのです。主要キャラが全て女性で、男性はモブとして出てくるのみ。

その分キャラクターの魅力や掛け合いをメインにするようになっており、よりキャラ萌えを追求したつくりになっているのです。と君命キャラであるキタキツネは自由奔放この上なく、菜々は終始振り回されることになります。しかし、話数が進むにつれキタキツネなりに菜々を気遣うようになっていくため、その変化が見所となっています。また、毎回ゲストになるフレンズが異なり、それぞれの「得意な事」を強調する見せ場が作られています。

とはいえ、基本はゆるい感じで進むギャグ部分の比率が高く、なかには得意分野で墓穴を掘るようなキャラも登場します。終始一貫しているのは、緊迫感のなさと、まさにけものの自由奔放さです。もともとは動物だからと許せるかどうかで印象が大きく変わるものの、アニメを見てからの場合はそのハードルが大幅に下がります。連載当時は爆発的ヒットにはならず連載終了という形で完了したものの、絵柄のかわいらしさもあいまって萌えの要素は十分な作品になっています。ただし、若干アクションシーンの描写が稚拙なため、動物としての迫力を押し出す描写が弱い点が惜しい部分でもあります。

強力な百合回があるのも漫画版の特色

「けものフレンズ」1巻には強力な百合回があるのも特色になっています。アニメ版では主役であるかばんちゃんが性別不明な部分があるため、百合展開はフレンズ同士に限られる部分がありました。ところが、漫画版の場合は人間とフレンズの百合展開があるのです。と、言っても、本人たちに自覚はなく、あくまでシチュエーションと妄想によって百合に仕立てられるだけです。しかし、要素的に萌える人がいればそれだけで十分といえます。

美少女同士の添い寝シーンなどもあるため、妄想がはかどるという人には見所になっています。また、一部のフレンズを除いて、社会性が低く、知能も控えめなため、進んでピンチに陥りに行くような部分もあります。自爆して助けて助けられてという百合展開も多く、しっとりとした雰囲気にはならないのもポイントになります。百合といっても余韻を味あわせずに強引に突っ切っていくようなスピード感があるため、やはり人を選ぶのです。

なにせ元が野生動物なので、気持ちが長続きせず、すぐに忘れたり気が変わったりするのがけものフレンズのけものたる所以といえます。アニメやアプリではなかったフレンズ同士の交流もあるため、カップリングに思いをはせるのもおすすめです。登場するシーンは少なくとも強烈に印象に残るキャラが多いため、このキャラとこのキャラが出会ったらどうなるかなど想像を広げやすいのです。現実の動物で考えた場合は食うか食われるかといった関係だけでなく、体格差も生じやすいため、ギャップを楽しみやすいのも魅力です。

先入観があるとマイナスになる可能性が高い

アニメが大ヒットし、トレンドとして話題になるようになったからこそ、アニメと差が浮き彫りになる部分も大きくなっています。特にアニメのイメージを持って漫画版を購入すると全く違う作品であることから、マイナス印象がおきやすくなります。まず、全く別の作品であることに理解が必要です。時系列的にも漫画の連載終了とアニメ放映がほぼ重なる時期であり、人気が出る見込みが低く、低予算でありながら大ヒット飛ばしたのがアニメ版だからです。

むしろ、アニメ放映前のけものフレンズプロジェクトを知るための資料的な価値があるのもポイントとなっています。何よりもよいところは、サーバルは終始サーバルだということです。サーバルはアプリ版でも最初に入手できるフレンズであり、漫画版の性格もアニメとほとんど変わらないのです。漫画ならではの表情の変化も楽しみたいところです。基本的にうっかりしていて様々なことに首を突っ込んでトラブルを引き起こすのがサーバルだからです。

キタキツネがメインキャラになっているとはいえ、サーバル回もしっかり用意されており、キタキツネも主人公の菜々もしっかり振り回されます。基本の軸がぶれないのが、けものフレンズプロジェクトの良さであり、こだわりでもあるのです。セルリアンという外敵がいない平和な世界で、人間と共存できていたらこうなっていたのかもしれないというそれぞれの違いを楽しめるかどうかが重要で、違いのよさを見つけ出せるかで評価が割れるのです。

まとめ

けものフレンズというプロジェクトの中で、もっとも評価を勝ち取り、漫画は連載終了、アプリも配信終了という中で大ヒットしたのがアニメ版けものフレンズです。どうしても比較対象になってしまうものの、萌えを追求する上で漫画版は十分に評価できるないようであり、絵柄のかわいさやキャラクター性をしっかり打ち出せているのが特徴になっています。

アニメを見ているかどうかで評価が分かれる部分があるだけでなく、全く別物として捉える感覚も要求されるため、愛着があるほど客観的な評価がしづらいのです。とはいえ、フレンズらしい自由奔放さは良く描かれているため、ハチャメチャな展開や突き抜けた行動を楽しんだ方がお得感があります。独特の音感で名をはせたトキの歌声が生かされるシーンがあるなど、ギャグ以外でも本人たちも幸せになるようなエピソードがあるのも評価できるポイントです。

争って優越を決めるのではなく、それぞれの個性をあるがままに受け入れるのがけものフレンズの良いところでもあります。トラブルも当たり前と受け入れられるおおらかさが漂っているのもフレンズらしさといえます。とはいえ、人間からすればそれが非常に大変だという意味でも、主人公の菜々の苦労人ぶりには涙するものがあります。動物と接する飼育員はとても大変な仕事なのです。新たに動物を知るきっかけや豆知識も与えてくれるため、何か惹かれるものが1つでもあれば読んでみるのがおすすめです。

オススメ度
★★★★★★★★☆☆ ★8

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