ケメコデラックス! 01 (電撃コミックス)

『ケメコデラックス!』は萌え系マンガの中では少し古めの作品です。月刊漫画誌への連載開始は、10年以上前の2005年。連載は2011年まで6年間続き、2008年にはアニメ化もされました。しかし、現在の知名度で言えば、あまり高くありません。

ただ本作は、萌え系マンガの王道です。今回レビューする第1巻から、主人公の幼馴染、妹、不思議系同級生、ヤンキー系同級生、女教師、窓を突き破ってガトリング砲を撃ちまくり敵を倒す謎の美少女(?)など、あらゆるタイプのヒロインがどんどん登場してきます。

SF的な設定の中で繰り広げられるアホなノリの(ときどきシリアスな)物語は、その独特の雰囲気で、当時の中二から高校生だった男子を魅了しました。

あらすじ

ごく普通の男子高校生、小林三平太は、6歳の夏、謎の美少女と結婚の約束を交しました。彼女を想い続け、時は流れて10年後。朝起きると、彼の部屋は戦場と化していました。花嫁衣裳で謎のメカと戦っていたのは、樽のような体形の美少女(?)「ケメコ」。

その少女は、高校に乗り込み、クラスメイトの前で三平太との結婚を宣言してしまいます。逃げる三平太。ショックを受ける幼馴染。やがて、闘いに傷ついた「ケメコ」の口がバコン! と開き、中から10年前のあの美少女と、そっくりの少女が飛び出してくるのでした…。

シリアスなはずのストーリーですが、随所にちりばめられたギャグによって、読みやすく笑って楽しめる作品に仕上がっています。

感想

メインヒロインは鋼鉄の花嫁「ケメコ」

本作のヒロインは、何と言っても謎の美少女型戦闘兵器「ケメコ」でしょう。ケメコは二頭身で目が大きく、瞳孔が開きっぱなしの美少女型バトル・スーツです。簡単に言うと、エヴァンゲリオン(少女型)といったところです。彼女に乗っているのは、エムエムというヒロインで、三平太と結婚の約束をした記憶の中の少女と、とてもよく似ています。

ですが、エムエムはそんな記憶はないようで、とにかく「敵」である「ミシマ電器」(宇宙規模の悪の組織)から三平太を護るために、ケメコを駆って雄々しく戦うのです。え? ならメインヒロインはエムエムなんじゃないか? と思われるかもしれませんが、ケメコに乗ったエムエムは真面目で内気な戦士から、自由奔放でハジけた電波キャラに豹変してしまうのです。言葉遣いも変わってしまい、ムチャクチャなハプニングを起こしてストーリーをぐんぐん引っ張っていきます。

読んでいるうちに、焦点の合わないケメコの目が、可愛く見えてくるほどです。そのムチャクチャさや行動力があまりに衝撃的で魅力的なので、1巻を読み終えた『ケメコデラックス』というタイトルがとてもしっくりくるようになります(マツコ・デラックスとは何の関係もないはずです)。とはいっても、本作のヒロインはケメコだけではありません。第1巻に登場するだけでも8人(ケメコ含む)の女子キャラが登場してくるので、ハーレム展開を所望の読者も十分に楽しめると思います。

ギャグマンガテイストで楽しめる、とにかくアホな物語

いわさきまさかずさんといえば、ハイテンションなパロディ系ギャグ作家として『月刊コミックガオ』でデビューした方で、『ポポ缶』(全三巻)というさらにアホな作品も描いています。そんな彼が、はじめて長編ストーリーマンガに挑戦したのが本作なのですが、やはり元々持っていたギャグマンガ家としての作風や味が、本作でも前面に押し出されています。

ふつうなら朝目覚めたらそこに居るのは美少女というのが萌え系マンガの「お約束」ですが、本作では謎の二頭身キャラですし、そのケメコはいきなり主人公のクラスの教育実習生として現代国語の授業を受け持つことになり、「ゆとりが個性を育てると思うな」とガトリング砲を撃ちまくるかと思えば、授業を中止して三平太との結婚式を始めようとしたり、午後の授業をすべて潰してプールでバカンス実習(各自水着自由)をおっ始めるなど、ケメコのキャラが破天荒で先の展開がまったく予想できません。

まさにハチャメチャ・ラブコメSFといった感じの本作ですが、一度ハマると続きが気になってどんどん読み進めてしまいます。ハイテンションなギャグマンガというと、ともすれば画面が汚くなりがちなジャンルなのですが、美少女と可愛さによって、それを見事に読みやすくしている点に本作の魅力があるのでしょう。いわゆる「日常系」が流行する以前の作品なので、ややとっつきにくい方もいるかもしれません。しかし、刺激的な「非日常感」を感じることのできる作品です。

けものフレンズもかくやという背後の闇?

ゆるくてかわいい作風の裏に、ハードで得体のしれない真実が隠されているのではないか、とSNS等で最近話題になった「けものフレンズ」というアニメがありましたが、本作『ケメコデラックス』も、一見アホな物語の裏に、何かハードで広大な真実が隠されている感じが、第1巻の時点でもけっこう感じられるマンガです。

たとえば、10年前の夏に謎の少女と結婚を約束するシーンでは、主人公は無理やり何かを食べさせられています。それは、いったい何だったのか、という疑問もありますし、どうやらその食べさせられた何かのせいで、主人公は「敵」に狙われるようになってしまったことも伺えます。主人公の記憶の中にいる少女は、まさに天使のような可愛いさですが、はたして、彼女は本当に主人公の思っているような、純粋で素敵な少女だったのかどうか、実は疑問なのかもしれません。

また、主人公に接触してきた謎のヤンキー黒髪ロング少女は、「この惑星の運命は…おまえにかかっている」と意味深に言い放ちます。主人公は地球全体をどうにかしてしまえる力を、あの記憶の中にいる少女に宿されてしまっているようなのです。アホな日常パートの裏に垣間見えるこのようなシリアスな謎と言葉が、読者を否応なくエムエムやケメコの正体は何なのだろうという思考に導いていくのです。つまり『ケメコデラックス』という作品は、アホでさらっと読みやすいSFコメディの読み心地で包まれた、シリアスな長編ストーリーマンガなのです。

まとめ

『ケメコデラックス』1巻は、青春と美少女を求める方にオススメしたい作品です。女の子の描写はけっこう煽情的なところもあってどきどきしますが、全体的にはデフォルメされた絵柄なので少年漫画の延長のようにして読むことができます。電撃コミックスというとあまり馴染みのない方もいるかと思いますが、コロコロコミックや少年サンデーが好きな方は読みやすいのではないでしょうか。

また、デザインや垣間見える設定の数々も、中2心をくすぐられる物ばかりで、B級SFやライトノベルが好きな方にもオススメできる作品です。アホな面ばかりをおもに紹介しましたが、本作は、実はラブコメでもあります。主人公三平太と幼馴染のイズミ、そしてエムエム(ケメコ)の三角関係がどうなるのかも、重要な見どころです。素直になれないイズミと、徐々に主人公との距離を縮めていくエムエム(ケメコ)、そしてどちらにもドキッとしてしまう三平太の関係は、1巻の段階ではまだまだ先がわからず、非常にもどかしいです。

それに加えて、「今日から私がおまえのヨメだ」と断言するケメコの堂々としたキモい見た目と、エムエムの可愛らしい照れた表情のギャップもまた萌えるので、そのあたりの外見と中身のギャップも楽しめると思います。カバー裏にも隠しイラストがあるなど仕掛けも面白いです。今回は『ケメコデラックス』第1巻のレビューをさせていただきました。萌え系マンガとしては有名な方ではありませんが、青春と笑いがいっぱい詰まった作品ですので、気になった方は手に取ってみてはいかがでしょう。

オススメ度
★★★★★★★★☆☆ ★8