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皆さんは「ふら・ふろ」という漫画をご存じでしょうか。2007年から2010年までに「まんがタイムきららキャラット」で、カネコマサル先生によって連載されていました。日常系のゆるふわ漫画となり、アパートの管理人であるハナとナツの2人組が主人公です。

特徴として「無い無いづくし」の漫画だと思います。主人公たちが管理人をするアパートは駅から遠く、お世辞にも立地に優れている訳でなないです。また、主人公たちはお金が無く非常に貧乏でいつもお腹がすいています。

そんな無い無いづくしの生活ですが、ゆっくりと日常生活の時間が流れます。季節ごとのイベントやアパートの住人との交流などが素朴に描かれており、貧乏ながらも日常を楽しむハナとナツを見て楽しむことが出来るでしょう。

あらすじ

全4室で設備や立地に恵まれていない小さなアパートが舞台となります。アパートの管理人である元気でいつもハイテンションのハナと、家計をまかされトラブルメーカーのハナにツッコミを入れる役割のナツは、貧乏ながらも楽しい生活を送っていました。

大きな事件や出来事が起こらない中で日常を過ごすハナとナツは、同じアパートに住む幼女(師匠)と一緒に遊んだり、夕飯のメインディッシュを決めるために、スーパーの特売チラシと睨めっこをする毎日です。たまには海に出かけたり、季節のイベントに参加します。

春夏秋冬を過ごす中で、新しいアパートの住人であるドジッ娘で不幸属性の吉田アオも加わります。何でもないように見える住民たちの日常生活も、季節と同じように彩が増えていき、そしてまた春がやってくるのでした。

感想

貧乏だけど素朴で楽しい日常生活

恐らくこの漫画は読んで楽しめる方と、ツマラナイと感じる方がどちらも存在すると思います。物語は1ページごとに話が終わる漫画なので、スラスラと読むことが可能です。しかし、大きな事件や性的で過激な描写は皆無で、貧乏ながら協力し合い充実した日々を送るナツとハナの素朴な生活を見守る漫画だと思いますね。ですから萌え系の日常漫画にジャンル分けされる「ふら・ふろ」ですが、多くの方が萌え系漫画に求める要素は少ないかもしれません。

物語は管理人であるハナとナツの掛け合いを中心に、不思議な感性を持つ師匠と呼ばれる幼女や、アパートの新しい住民となった吉田アオが加わりますます賑やかになります。破天荒な性格でハナとナツを圧倒する大家さんなど、登場するキャラクターたちが個性豊かです。そしてキャラクターたちには「ふら・ふろ」で感じる素朴な優しさも存在し、悪者や優しい人間をバカにして陥れるキャラクターは登場しない、日常系漫画の理想的な設定を感じます。

また、アナログ的なことを大切にしていることが伝わる漫画ですね。例えばヨーグルトの空き瓶で可愛らしい風鈴を手作りしたり、掃除の傍ら落ち葉を集めて玉ねぎやリンゴを焼いて食べたりと、デジタルで味わうことが難しい楽しさが表現されています。クリスマスケーキの値段が高いから、代わりにあんまんにロウソクを立ててお祝いしたり、新聞紙でヨロイと兜、刀を作って幼女の師匠にプレゼントする描写など、どこかノスタルジーを感じさせて見入ってしまいます。

人情や人間関係が豊かに描写される

「ふら・ふろ」には現代の情報社会で私を含めた人間が忘れてしまった「人情」が存在する希少な日常漫画だと感じます。人情的な物語を描写する漫画は多いですが、それが説教臭くなく、自然に感じることができる漫画は大変少ない印象があるのです。「ふら・ふろ」に描かれる温かい人間関係は、主人公であるハナとナツが中心となり描写されますが、ハナとナツには、例え無理のある漫画的な行動をされても、自然体で嫌みがないことが素晴らしいです。

例えばゲームセンターでトラブルメーカーのハナが店員に対して「店員さん!じゃんけんで勝ったらこれください!」と、とんでもないことを言います。普通なら読者も「何なのだろうこの子は…」と思ってしまいますよね。ですが「ふら・ふろ」の優しい世界観からは、そういった信じられない発言も「ハナなら仕方ないか」と受け入れられるのです。これは作品の世界観が完成されていないと思えないことで、日常漫画というジャンルの中で非常に優れた漫画だと感じました。

漫画が持つ独特の雰囲気の正体は「温かさ」だったり「優しさ」のせいだと思います。そこに気づくまでは、私のように時間が掛かるかもしれません。「ふら・ふろ」が持つそのような雰囲気を理解した時に、きっとこの作品に夢中になってしまうでしょう。また登場キャラクターの細かい表情の描き方も見事です。気の強い女性で滅多にアパートに来ない大家さんが、寒さから頬を染めながら「食材買ってきた、何か作ってやるよ」と笑顔で発言する場面では、作品の優しさが物凄く滲み出ている素敵な場面です。

彼女たちを見ていると幸せな気持ちになる

春夏秋冬の楽しいイベント事も描かれていますが、相も変わらず手作り感満載で、アナログ的な楽しさがあります。海に出かける話では、魚屋のおっちゃんが車の荷台にナツとハナを乗せてくれて、2人は歌を歌いながら海に向かいます。読者たちも子供の頃に車の荷台に乗せてもらった方は、懐かしさを感じると同時にどこか切ない気持ちになるでしょう。澄んだ空からは飛行機雲が見え、ヨーグルトの瓶で作った風鈴が描かれる…。気づきにくい描写からカネコマサル先生の拘りを感じます。

人情が魅力の作品ですが、もちろん人間関係も魅力的です。ハナとナツはタイプは違えどお互いを大切に思っていることが伝わります。同じアパートに住む幼女の師匠は、ハナとナツに懐いていますが、それはハナとナツが対等に師匠を扱っているからだと考えていますね。ドジッ娘の吉田アオが入居してきた時もアオを心配してか、管理人なのに洗濯機は置けないことや最寄駅から遠く住みづらいことを心配していました。そして直ぐに歓迎会のお花見を開催するなど、他人を思いやる2人に感動します。

そんなハナとナツが少ないお金で銭湯に行ったり、アパートの住人と楽しそうにしている場面を見ると、読者の私まで楽しくて幸せを感じますね。冷蔵庫には調味料しか無いほどに極貧ですが、登場するキャラクターたちの心は豊かだと感じられます。素朴で何気ない日常を過ごす彼女たちが妙に愛おしくなれる作品で「ふら・ふろ」の1巻には、そのような要素がふんだんに盛り込まれ、世界観にハマった方なら日常漫画の傑作だと思えるでしょう。

まとめ

「ふら・ふろ」の感想を書かせて頂きましたが、いかがだったでしょうか。萌え系の日常漫画としてはあまり知名度が無い作品だと思いますが、上でも述べたように独特で素朴な優しさや素敵なアナログ要素のある漫画作品で、読んでいて疲れない作品でもあります。現代人が忘れてしまった人間関係や人情も描かれているので、読者の幼い頃を思い出すようなノスタルジーや切なさも存在する漫画です。知名度が無いことが信じられない作品だと思いますね。

たしかに読む人間を選ぶ作品であるのは事実です。基本的には貧乏なアパートの管理人2人の日常を見ているだけに近い作風なので、物足りないと感じてしまう方もいるはずですよね。私もふら・ふろを「無い無いづくし」と評価しましたが、キャラクターたちはお金やエアコン、こたつが無くても、素敵な人情や人間関係が存在しています。目には見えない部分に恵まれているので、現代の気薄になってしまうそういった部分で彼女たちが羨ましくてたまりません。

「ふら・ふろ」は読者ターゲットとなる層として、社会人となって仕事や人間関係に悩む方が合うのではないかと思うのです。または学校生活が上手くいっていない学生の方など、何かしら日常生活に疲れてしまった方は、この作品の良さに気づくことができるはずです。他の日常系漫画と比較すると非常に静かで落ち着いて読める作品でもあるので、読者の傍にそっと存在してくれるような漫画作品ではないでしょうか。もっと有名になってほしい作品です。

オススメ度
★★★★★★★★★☆ ★9

記事担当:キリンリキのしっぽ

レビューを通じて作品を知らない方にも興味を持っていただければ幸いです

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