知る人ぞ知る漫画家兼原作家「土塚理弘」先生が送るのは、なんと女子剣道部の物語。ギャグマンガやファンタジー漫画を主に執筆していたので、意外に思う人も多いでしょう。土塚ワールドを残しながらの青春剣道物語、作画は五十嵐あぐり先生が担当します。

舞台は「バンブーブレード」…竹刀との名前の通り、高校女子剣道部。表紙にもいるような可愛い可憐な美少女が、剣道の暑い胴着を着て熱く竹刀をふるいます。そしてもちろん、女子高生ならではの和やかで可愛いほんわかした日常も!

最初はなんと部員一名(他ユーレイ部員)、顧問すらやる気のない、部の存続すら危うい弱小剣道部。ある日ひょんなことから顧問のコジローがやる気を出して…?熱血とギャグと癒しのハーモニーが織り成す青春物語を、是非ご堪能ください。

あらすじ

とてつもない弱小剣道部の顧問でもある主人公、コジロー。日々生活を乗り切るのに精いっぱいで、「新入部員よりも給料が入ってほしい」のが本音。しかしある日コジローに、別の学校で教師を勤めている先輩から声がかかる。「賭けをしないか?」

賭けとはずばり、お互いが顧問をしている剣道部を戦わせて、勝つこと。そしてその賞品はなんと寿司一年間食べ放題!金欠のコジローにはなんともありがたい話です。早速剣道部を強くしたいものの、まずは部員集めから。それも、先輩に勝つには今すぐ戦えるような、圧倒的な力を持った部員が欲しい…。

そんなコジローの目の前に現れたのは、一人の少女「川添珠姫」、通称タマちゃん。小柄でおとなしそうな外見をしている彼女は、なんとコジロー達に降り注いできた野球部やテニス部の玉を、顔色一つ変えずに「竹ぼうき」たった一本ですべて薙ぎ払ってしまうのでした。

感想

萌えだけではない何かを思い出すような熱さ

登場人物は当然ながら女子剣道部ともあって女性ばかり。ですが主人公は剣道部顧問のコジローです。昔は剣道をやっていたものの、今や大人となり少ない給料でやりくりをする日々。そんな日々を過ごしているうちに、剣道部を担当しているにも関わらずやる気はゼロ、情熱を忘れてしまった様子。大人になってしまったら仕方のないことですが、部屋の片隅に追いやられていた竹刀を握り、ちょっと振ってみたら電球を壊してしまう…。そんな物悲しい演出と、「あーあ、情けね」というセリフ。大人にはなんだか、頷けてしまうような感情です。

序盤のうちはそんな感じのコジローですが、タマちゃんを見た瞬間に忘れていたものを思い出します。「中学の頃隣のクラスの子に一目ぼれしたみたいにドキドキ」してしまったコジロー。そうです、「すごい剣さばきを見て感動する」という気持ち。学生の頃持っていた気持ちが、ふつふつとコジローに蘇ります。何もやる気のない、ただ日々を浪費しているだけだったコジロー。嬉しそうにどきどきしながら竹刀を振る姿は、こちらまで童心に帰りそうになります。

とはいえ、やはり学生からずっと剣道をしていなかったコジロー。昔は先輩を実力で倒したと胸を張って言えるほどの実力を持っていたとしても、今ではタマちゃんに瞬殺されてしまう程度。なまったなと自分で言いながらも、コジローはそれでも楽しそうにしています。その姿は、何か忘れていたものを思い出させてくれるようです。萌え要素だけにとどまらない主人公の成長や熱さも、この漫画の魅力と言えるでしょう。コジローの行く末も見守りたくなります。

魅力的なかわいい女性陣といい味出してる男性陣

こういう系統の漫画には珍しく、女子部員の中には彼氏持ちのキャラクターもいます。ですがそのキャラクターの彼氏は二頭身の可愛いマスコットのような外見をしているので、まあ、めらっとはしないんですね。むしろ「えっこれペット?」みたいな。ちょっと微笑ましく見えてしまう程。また、主人公ハーレム系の漫画でもなく、女性陣は皆自分の想いを胸にまっすぐに、ひたむきに剣道に打ち込んでいきます。最近のラノベ感よりも青春スポ根漫画のようで、少し懐かしい感じです。

一巻に登場する女性はちょっとつかみどころがないけれど頼りになる部長「サヤ」。彼女は唯一ユーレイにならず最初から剣道をしていたキャラクターで、コジローがやる気を出したことに一番喜んだキャラクターでしょう。のほほんとした雰囲気が作品の清涼剤です。それから、前述した彼氏持ちのキャラクターである「ミヤミヤ」。二頭身マスコットを彼氏に持ちながらも抜群の美貌の持ち主です。…が、竹刀を手にしたときの表情が完全に何人かこれもうやっちゃってるよね?みたいな表情をしています。それもそのはず、裏の顔はなんと…?

最後にこの漫画のもう一人の主人公「タマちゃん」。クールで表情ひとつ変わることがあまりない、無口で物静かな少女です。とても小柄でまるで図書委員でもやっていそうな感じですが、剣道の腕は無敵。身長差のある不良部員に涼しい顔で面を打ち込み、合わない袴というハンデを背負いながらなぎ倒していく様は圧巻です。…ですが、実はヒーローものが大好きで、ヒーローに憧れているというなんとも可愛らしい一面も。そしてものすごくいい子。この一言につきます。魅力的なキャラクターたちの織り成す日常から、目が離せません!

絶妙な熱と萌えと笑いのバランス

スポ根漫画だと熱い熱い!ちょっと気を抜いて読みたい!という人もいるかもしれませんが、バンブーブレードはかなり熱とほんわか癒しと笑いのバランスのとれた作品です。びしっと決めるときは決めるけれど、ほかの所はちょっと気を抜いて読めるというのは原作である土塚先生の持ち味でもあります。肩の力を抜きながら読んでたら不意にやってくる真面目シーンにうるっとくる感じ、このバランス。適度に頭を空っぽにして読みながら、適度に頭を動かせる感じです。

例えば先輩の賭け、先輩は負けたら寿司を奢りますが、先輩が勝ったら「トロフィーがほしい」と言います。このトロフィーは二人が学生の頃、剣道の試合でコジローが先輩を倒して手に入れたトロフィーです。あれはまぐれだからもともと自分のものだと先輩は言いますが、コジローは静かに手のひらを見つめます。「剣道にまぐれなんてない。俺はあの頃確かにあんたより強かった」――。コジローの剣道への想いが垣間見えるシーンです。

ですがコジローはそれをわかっているので、トロフィーなんてどうでもいいのです。ただ自分が実力で勝てたという真実があるので、形なんていい。むしろあの時あげていればよかった。そう思うほどトロフィーに固執していなかったのですが、今となってはどうしてもトロフィーを渡せない理由があるのです。どうしても渡せない、そう思いながらトロフィーの箱を開けると、なんとそこには無残な姿になったトロフィーの姿が…!なんとゴキブリが出た時にトロフィーで殴って壊してしまったんですね。いいシーンにもくすっとくるような明るさがあるのが、この漫画の魅力です。

まとめ

全体を通して真面目でかっこいいシーンもあればくすっときてしまうシーンもあり、みんなでお弁当を食べるほんわかしたシーンもありな第一巻。今時珍しすぎるお米に梅干しが一つ乗っただけの弁当を持ってくるタマちゃんが、友達とけ合うためにサンドイッチにする姿は我が子の成長を見ているよう…。少年漫画のような熱い展開もあり、ギャグマンガのような笑いもあり。そして何より主人公コジローの熱を、大人になった人にこそ見て頂きたいです。部活をやっていたなら尚更。剣道をやっていたならパーフェクト!コジローも忘れていた、あの頃確かに持っていたものを思い出すかもしれません。

女の子がまだ揃いきっていないので、明確に出ている女性キャラクターは三人ほど。ですが「サヤ」と呼ばれるユーレイ部員の名前などが出ているので、これからもどんどんキャラクターが出てくることがわかります。そして基本のノリがゆるーい感じなので、主人公サイドは今のところ皆仲良くふわふわしています。女の子同士のふわふわした日常が好きな人は癒されるでしょう。剣道の描写は。まだ足さばきなどの本格的な説明は出てきませんが、勢いよく相手に竹刀を叩き込む描写などはとても迫力があります。

ひょんなことから始まってしまったコジローの剣道生活。タマちゃんという凄腕の剣士を見つけたコジローですが、実はタマちゃんには「部活には興味がない」と一蹴されてしまうのです。読者的には「え?この表紙の子入らないの?」という感じですが、そこは見てのお楽しみ。女性キャラクターはまだ三人ですが、どの子も個性的できゅんとくるというよりはほんわかと癒されるような可愛さがあります。ああ青春ってこんな感じが理想だったなあという感じ。このキャラクターたちがゆっくりと成長する物語を、どうぞお楽しみください。

オススメ度
★★★★★★★★★☆ ★9

記事担当:群青