「空の下屋根の中」は「まんがタイムきららキャラット」で連載されていた、双見酔先生による4コマ漫画です。内容は高校を卒業してからやりたいことが見つからず、無職となった主人公の日常生活が素朴で可愛らしいキャラクターで描かれています。

ゆったりとして優しい雰囲気が存在する作品ですが、働くことに対して主人公が悩む姿は、働くことに悩んだことのある方なら心に響くことでしょう。何をするにもやる気が出ないことや、求人情報を見ただけで一日が終わる場面は、経験がある方なら身に詰まらされますね。

働くこと・働こうとするも上手くいかないことが描かれた珍しい萌え系4コマ漫画で、主人公の行動一つひとつが「私と同じじゃん…」と共感できます。「空の下屋根の中」を読んだ方はきっと働くことについて真剣に考えるようになるでしょう。

あらすじ

高校を卒業後、やりたいことが見つからず無職となった笹川香奈絵は、重い腰を上げるも就職活動が上手くいきませんでした。友人たちの働く姿を見ては、自分よりも輝いて見える友人に感化され、また仕事を探すようになりますが…。

しかし、大人しい性格で消極的な香奈絵は、やはり就職活動が上手くいきません。自分に合う求人情報を探しますが探すだけで疲れてしまいます。履歴書を購入しても、大きな第一歩と考えることで満足してしまう生活が続いていました。

勇気を出して職安や企業の面接に出向きますが、不合格になってしまい一向に良い成果が得られません。香奈絵は無職である自分に落ち込みながら生活する中で、働くことの意味や仕事の大変さを知っていき、これからどうするのかを考えるのでした。

感想

無職の主人公の日常と働くことについて考えさせられる

「空の下屋根の中」は、可愛らしい淡い絵柄が気に入って読みました。主人公である香奈枝の苦悩が丁寧に描かれていて、社会人や就活、無職の経験がある方は共感できる描写がいくつもあるのではないでしょうか。やる気が起きずに昼過ぎまで寝ていたり、履歴書に貼る証明写真を撮りにいくだけで緊張してしまう場面は、他者から見れば信じられないと映るかもしれませんね。ですが、香奈絵の気持ちが痛いほど理解できる方は私を含めて多くいるはずと思います。

無職の自分をどうにか良い方向に変えたい…。そんなことを毎日のように考えても実行に移すことは難しいのです。ましてや香奈絵は社会経験がまったくないので尚更ですよね。一生懸命働く友人の姿が輝いて見えることや、働いて稼ぐことの大変さに気づかされること。そういった要素が他人事とは思えず、香奈絵ちゃんを応援したくなります。働かなければならない意志は香奈絵にあるので、何とか頑張ってもらいたいと心の底から思いましたね。

香奈絵の母親は、お金が欲しかったから働いたとこと、決して仕事が楽しくて働いて訳ではないと言います。恐らく世間で一生懸命に働いている方たちのほとんどが、そのように考えていると思うと胃が痛くなりますね。もし働いたら朝の支度や通勤時間を含めて一日が仕事で終わってしまう想像を香奈絵がしますが、本当にその通りで、それが毎日続くとなると大変です。楽しく充実して働くことは一朝一夕で行えないことなのかもしれませんね。

働くことは決して簡単なことではない

香奈絵は母親の紹介で小さな酒店で一日体験アルバイトをしますが、お客さまに対しての挨拶「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」の一言が上手く言えません。頭では分かっていても処理不能となり、仕事が終わってもアルバイトの辛さや大変さが頭から離れないのです。友人の働く姿を見て「私もあんなふうになれるのかな」と自問自答を繰り返しながら、何とか現状を打開しようと仕事を探す香奈絵は偉いと思います。なかなか出来なることではないですよね。

働いている香奈絵の友人たちも必死に働いており、そんな中で悩む香奈絵に「悩んでみるのもいいのでは」とアドバイスをお送ります。感動してしまうのが、無職の香奈絵を馬鹿にせずに、一人の友人として見てくれることです。「そんなのあたりまえだ!」と思う方もいるかもしれませんが、どうしても意識してしまいますよ普通は。友人である白井まゆは、細かいことは何も言わずに接してくれるので、本人にはそんな気は無いにしろ、素晴らしいと感じましたね。

無職で様々なことで悩む香奈絵ですが、そんな彼女を羨ましいと思う点は友人がいる所です。話をする人間がいると例え気が滅入っていても、元気が出ることがあります。生き方に悩むことがあれば相談もできますからね。1巻の表紙には、働くことに悩みベットで考える香奈絵と、何も言わずに傍で漫画を読んでいる白井まゆの姿があります。考え過ぎかもしれませんが、白井まゆが「大丈夫、どうにかなるさ」と言っているみたいで言葉は無くてもそのように伝わってくる表紙ではないでしょうか。

働くということは自分に責任が生まれる

働くことに悩む香奈絵ですが、おもちゃ屋の求人を見つけて応募します。幸いアルバイトに合格して、おもちゃ屋で働くことになりました。アルバイトでは、普段子供の夢を大切にすることや、楽しそうなイメージをおもちゃ屋に抱きますが、万引き対策で挨拶や見回りをするので、香奈絵は店員とお客の関係について考えてしまいます。働く側に立つと、今までとは違う景色が見えることがあり、そのことを強く実感してアルバイトに一生懸命です。

職場での人間関係は癖が強い方はいますが皆良い人ばかりです。あまり話をしない店員とのコミュニケーション方法に迷いますが、何とか仕事にも慣れていきます。その姿は、なかなか仕事が決まらない時期から見て成長を感じられるので感動しますよ。商品の梱包ひとつでも香奈絵にとっては未知のことですから、もし適当に仕事をしてしまったら商品をプレゼントした方や貰う方がどう思うかなど、自分の仕事に対して責任を感じるようになります。

忙しい日々を過ごす中で働いている実感が次第に湧いてきます。まだまだ学ぶことがある彼女ですが、最初の働くことに悩んでいた無職の時とは大違いで、彼女の成長を感じずにはいられませんでした。仕事に対しての考え方も変化していく姿も1巻全体を通して描かれているので、読み返してみればみる程に実感できるでしょう。そう思うと、私たちが普段生活する中で気づきにくいこと…。例えば香奈絵のように悩み、何かを考えながら働いている方はたくさんいることに気づかされた作品でもあります。

まとめ

この作品は、一度でも働くことに対して悩みを持った方に合う4コマ漫画だと思います。主人公の行動や考え方がどれも上で述べたように共感できるものばかりなのです。生活をしていくために私たちは仕事をしますが、世間では働くことが当たり前と認識される中で、主人公が感じる悩みは、読者の皆さんが同じことで悩み可能性もあるはずですね。だから私は主人公に対してとても他人事とは思えず、主人公=自分だったらどうするかと考えて作品を読みました。

働き方は多様化する一方で、主人公のようにアルバイトを探すだけでも難しいと感じる方もいますよね。私もそうで、必ずしもアルバイト先の職場環境が優れているとは限りませんし、残酷な話ですが多少の運も絡むと思うのです。「空の下屋根の中」の良い所は、現実社会で目を背けたくなる要素を、可愛らしい絵柄でほんわかと描いている所でしょう。ゆるく働く厳しさや、やりがいを丁寧に描いていることも素晴らしく、登場人物に感情移入しやすい漫画でもあります。

ジャンルとして萌え系の部類に入る作品ですが、肌色要素や過激なバトル要素、昼ドラばりの展開は全くありません。作品には、主人公が働くことに悩む姿や日常生活が淡いタッチで優しく描かれています。なかなか社会派の漫画ではないかとも思いますね。作品をおすすめする層としては、社会人や働き方に悩んだことがある方、無職の経験がある方には非常に合う作品ではないでしょうか。時代を考えると、この漫画に共感する方が今後も増えていくかもしれませんね。

オススメ度
★★★★★★★★★☆ ★9

記事担当:キリンリキのしっぽ