『ぐーぱん!』2巻目に突入です。作者の榛名まお氏にとっての始めての2巻目となる単行本だったりします。漫画作品の場合、2巻目ともなると段々とキャラクターの特徴が固まってくるものですが本作も各キャラクターの特徴がより明確になるわけです。

前巻では鷲頭末里(わしずみり)、長尾唄子(ながおうたこ)、豆田菜摘(まめだなつみ)の3人が中心となることが多かったのですが、本巻ではそこにモデルを営む腹黒っ子の赤城咲(あかぎさき)や菜摘の家でメイドをしているユーコさんもよく登場するようになります。

レギュラーメンバーの3人だけで話を回すという閉鎖的な関係性が少し広がる『ぐーぱん!』の世界。特に咲の知られざる一面が段々と掘り下げられていく様子は新しい展開を期待させてくれます。さっそくあらすじから見ていきましょう。

あらすじ

とある女子高に通う末里、唄子、菜摘の3人を中心とした『ぐーぱん!』ワールドですが、冒頭からいきなり末里が虫歯になってしまいます。歯医者さんの予約から何から全てを弟の悠(ゆう)くんがこなしますが末里は1人で歯医者に行くと宣言。果たして1人で行けるのか…!?

教室で携帯をいじる菜摘。その様子を恨めしそうに見る末里はどうやら魔法少女ものの携帯コンテンツを見たいものの携帯をもっていないため悩んでいる様子。その後、親の許しを得ていつもの3人で携帯を選ぶことになります。そうしてゲットした携帯に早速誰かからメールが来ました。

他にも赤城咲がメインのストーリーがあったり学校の怪談もの、家庭過失のお料理話など様々なバリエーションに富んだ話が掲載されています。そして随所に見られる菜摘の末里への友情…もとい愛情には注目しておきましょう。本格的にレズ心が芽生えた菜摘は必見です。

感想

いきなりのハイパーミヨリンブレイカーッ

まず本巻の最初にはカラーページで構成された話が掲載されているのですが、ここの末里が可愛くて可愛すぎます。魔法少女ミヨリンというアニメに夢中な末里は突如興奮し「ハイパーミヨリンブレイカーッ」と叫びながらミヨリンになりきるのです。ただ掛け声を上げるだけではありません。自室に保管しているコスプレ衣装に着替えるなり「マジカルリリカル リンリンリーン!!」と変身シーンの決め台詞的なものをビシッと決めるのです。弟の悠くんやお母さんにはお馴染みの光景らしいのですが、読者にしてみれば萌えそのものとなるでしょう。萌えのイデアはここにありました。

それから悠くんにグレノ君という役をやってもらおうと「やってやってやって!!」と幼女ばりに頼み込むことになります。最早幼女です。そして乗せられた悠くんはノリノリで役をこなしつつ末里に褒められてデレーっとするわけですが、そこに唄子と菜摘が訪ねてきます。この日は勉強会をしようと約束していたわけです。一体どうなるのか…といったお話なのですが、とにかく末里が可愛い。たった6枚のカラーページの中にどれだけ萌え要素を詰め込めば気が済むのでしょうか。ありがとうございます。

末里は女子高生でありながら幼女にもなれる稀有な人材です。しかもそこに何の意図も含意もありません。ただただマジカルミヨリンに対しての愛や憧れといった純粋な感情があるだけなのです。それこそ幼女!我々の理想の幼女はこんなところに居ました。愛らしいキャラクターが完全に安心しきってのびのびと何かに夢中になっているという漫画は、それだけで価値のある作品なのです。そしてこうした場面が成立するためには安心した環境が必要となります。末里を取り巻く家族や友人が居るからこそ末里はのびのびできるというわけです。そしてそれを支えているのが『ぐーぱん!』という作品世界なのでしょう。

菜摘というキャラクターに秘められていた萌え要素

前巻からその萌芽が見て取れた菜摘の末里に対するレズ心はこの巻で大輪の花を咲かせます。当初はいたずらっ子というキャラクターでしたが2巻目でレズっ子という要素も加わるわけです。確かに末里の魅力にあてられたなら同性でもくらっと来てしまうのは納得です。こんな可愛い生物がいたらレズにもなりますよ!といっても生々しいレズじゃありません。どちらかというと妹的存在への愛着も混じっているかもしれません。それからさらに菜摘には新しい特性もつけられます。

それはまさかの「寂しがりや」という特性です。前巻で明らかになりましたが、菜摘は大きなお屋敷に住むお嬢様で、屋敷にはメイドさんも居ます。そして重要な事実が明かされました。末里が家族と喧嘩して菜摘の家に来てあまりの快適さから「わ…私 菜摘んちの子になろうかなあ…」と言ったとき、メイドのユーコさんに「ユーコさん養子縁組の必要書類一式取って来て父と母に送ってください」と発言しているのです。何と菜摘は父母と同棲しておらず、また兄弟が居ないということも別の話で述べています。一緒に住んでいるのはメイドのユーコさんのみ。寂しいじゃあないですか。

そのためか、菜摘は少々やりすぎとも思えるほど寂しんぼな言動をすることがあります。例えば興味がほとんどない占いの話で末里と赤城咲が盛り上がっているところに無理矢理割り込んでいったり、携帯を既にもっているにも関わらず末里と唄子とお揃いの機種に即時変更したりと涙ぐましい努力をするわけです。何と言うか、こう母親や父親に見捨てられまいとして注目を集めるような言動をする子供の様子を見ているようで胸が締め付けられます。菜摘という萌えの原石はここにありました。

様々なキャラクターの魅力が引き出されている

榛名まおの作品には影のあるキャラクターが登場することが多いのですが、本巻では特に菜摘の描写にスポットライトが当たっていると言えるでしょう。どこか壁を作り明るい振る舞いをする菜摘の本心は寂しがりやで虚勢を張っているだけの女の子だったわけです。たまりませんな。相変わらずちょっかいを出したりからかったりするのですが、そこに悪意というものはありません。愛する末里との触れ合いがたまらなく楽しいのでしょう。寂しさを紛らわせてくれるのでしょう。そう考えると菜摘の魅力がうなぎ登り、フィーバー状態になってきます。

ただ主人公である末里の魅力がかげりを見せたかというとそんなことは全くありません。ハイパーミヨリンブレイカーッと叫ぶ末里はただただ可愛い幼女ですし、家庭科の授業でラム酒を入れすぎたパイを食べたときには急に「中学までおねしょする人は結構いるんだって」と独白をかましています。むしろ末里と菜摘のダブルフォーカスな巻と言えるかもしれません。それぞれ味わい深い萌えを味あわせてくれる『ぐーぱん!』には萌え冥利に尽きるとしか言えないのです。

それから赤城咲にも注目したいところとなります。咲はモデル業をこなしているからか少し腹黒く、前巻では末里が目立つことに嫉妬し悪巧みを抱いていたほどだったのですが、本巻では末里が見つけた猫を先生に見つからないよう奮闘している様子が描かれているのです。また、祭りで迷子になった末里の世話をしたりと実はかなり優しい女の子なのでは、と思わせる言動をしてくれます。あえて言うなら面倒見の良い厳し目なお姉さんというところでしょうか。同じお姉さんキャラでも唄子とは別方向のお姉さんと言えるかもしれません。

まとめ

『ぐーぱん!』は第2巻でキャラクターの魅力がそこかしこで爆発するようになりました。まずはカラーページの末里が魔法少女ものアニメに夢中になっている様子でやられます。次に菜摘の家庭環境と寂しがりやな言動に強烈な萌えブローを食らい、咲の優しさにほだされるわけです。ありがたい…そんな言葉が脳裏に浮かびます。様々な色の様々な萌えが交差し絡み合い『ぐーぱん!』の世界は構成されているのです。段々とキャラクター性が固まってきたことで前巻よりも読みやすいといえるかもしれません。

また、当初作品のコンセプトは「毎回のオチが暴力沙汰になる」というものだったのですが本巻ではそのなりを潜めています。というか末里自体が暴力をそうそう振るわないようになりむしろ幼女化していると言えるでしょう。ただ菜摘に末里が怒りのアッパーカットを決めていたりするので完全に暴力が消えたわけではありません。ともかく、こうした変化はキャラクターが作品世界内で生きているからこそ起きる現象と言えるでしょう。彼女達はコンセプトありきの存在ではなく彼女達自身の生を生きているのです。

末里という愛らしいキャラクターが生き生きと自分を生き、菜摘が構ってもらうために必死になったり、唄子がその優しさで末里を抱擁したりと『ぐーぱん!』世界のキャラクターは最早『ぐーぱん!』世界の住民のような存在として読者の前に現れるわけです。モデルの咲や末里の弟である悠くん、それから菜摘のメイドのユーコさんといった人物達もあわせて1つの世界を構築してきた『ぐーぱん!』ですが、次の巻が最終巻となります。一体この可愛らしい萌え漫画がどんなエンドを迎えるのか気になるところです。

オススメ度
★★★★★★★★★★ ★10

記事担当:くもすい