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『ぐーぱん!』ついに最終巻となりました。全体を通してみると3巻というコンパクトな巻数にも関わらずキャラクターが生き生きと動き回る秀作4コマ漫画と言えるでしょう。これにてお馴染みの面々とはお別れとなりますが仕方ありません。

当初は誤解を受けやすかった鷲頭末里(わしずみり)も段々と幼児化し素直な幼女になりかわいらしい存在として納まるようになりました。本巻では遊び相手すら幼児になることもあるぐらいなので、これが本来の末里の姿だったのかもしれません。

また、本巻ではついに長尾唄子(ながおうたこ)に新しくも不思議な特性が付与されることとなります。また、豆田菜摘(まめだなつみ)はより末里への愛をこじらせ、モデルの赤城咲(あかぎさき)はほぼレギュラーメンバーとなるのです。楽しく面白い『ぐーぱん!』最終巻について見ていきましょう。

あらすじ

学校内の事件を解決するために前巻で結成された鷲頭探偵団の設定はまだ生きていた。菜摘がまだ探偵団の設定が生きていることに驚く中、事件が発生する。謎の財布の持ち主は?咲が飼っていた消えた猫の行方は?一体どんな結末を見せるのかこうご期待。

親が出かけ弟が部活のため末里が1人でお留守番をすることになりました。不安の中で過ごす末里の元に宅配便が届く!ホラー映画を見てしまったので怖い!果たして末里は無事にお留守番をこなすことができるのでしょうか。

他には菜摘が記憶喪失になったり、末里が初めてのアルバイトをこなしたり、唄子の謎の能力が発揮されたり、咲が末里と強力して運動会に望むなど様々なエピソードが掲載されています。最終話もいつも通りでハッピーエンドという感じです。

感想

幼女化が止まらない末里の行く先やいかに

前巻から段々と暴力性がなりを潜め幼女性が強くなりつつあった末里ですが、本巻ではむしろ幼女になっています。まず冒頭のカラーページで鷲頭探偵団の会議が開かれるのですが、動機が純粋です。「探偵格好いい」という前巻で見られた当初の動機も純粋ですし、本巻で事件解決後にお礼を言われて目を輝かせる末里が「困っている人を助けたい」という動機でよりやる気になっている姿はもう愛おしくてたまりません。最早女子高生というより娘的な存在のように見えるかもしれません。

それから末里はいとこの拓(たく)くんという幼児と遊ぶのですが、拓くんはなかなか落ち着きが無いので末里のコレクションを壊してしまったりします。その様子を咎めるでもなく泣きながら「講演で遊ぼう楽しいよっ!!」とお姉さんな振る舞いをするわけです。そして公園に着くなり戦隊ヒーローものごっこが始まりたくさんの男子児童に囲まれて遊ぶのでした。最早幼女な末里は心の底から楽しんで遊びます。ただただ単純にかわいいとしか言えません。

末里は当初、引っ込み思案で他人と話すのが苦手な子でした。ですがストーリーが進む内に『ぐーぱん!』世界内で段々とくつろげるようになったのです。友人や家族以外の人物と触れ合う必要性が無くなり、世界を広げなくても良くなったと言えるかもしれません。より唄子や菜摘、それから咲と友情を深めていく過程で末里は自分の居場所を得ることができたのです。当然、そこには身を守る暴力は必要無く、ただただ自分らしく居れば良い。そのため末里は自分らしい自分である幼女性を強めていったのでしょう。

そのままで良いという世界の暖かさ

末里が自分の居場所を得たことは素晴らしいことですが、それは必ずしも外界と適応できるわけではありません。あるエピソードに末里が欲しいゲーム機のためにウェイトレスのアルバイトを始めます。ただアルバイトといっても菜摘の紹介なのである程度は保護されている状況です。そしていざ「楽勝」と思っていたウェイトレスをやってみると、緊張のあまり皿は落ち水はこぼれケーキは崩れてしまいます。それでもケーキをお出しする末里は混乱しているのかもしれません。

結局アルバイトその日限りで終わってしまうのですが、末里のこれからが心配です。これまでの末里の生活は暖かい存在に包まれたものでしたが外界に出てしまうと失敗の連続をしてしまうということが判明してしまいました。では果たして末里はこれから生きて行けないのか、というシリアスな展開が考えられるかというとそういうわけでもありません。末里はそのままで良いのです。自分の居場所だと思って生活をする限り、末里は一生懸命に生きていくでしょう。

『ぐーぱん!』の物語は末里を主人公とする物語であり、末里によって救われる物語でもあります。例えば菜摘は末里という純粋で愛らしい存在が居なければ他人の顔色を伺って寂しさを押し殺して生きていたかもしれません。唄子も保護する対象が居なくて寂しい思いをしたでしょう。モデルの咲だってひねくれた性格のまま過ごしていた可能性もあります。登場人物の誰もが末里という萌えの化身によって救われているわけです。そのため末里は常に誰かを救いつつ救われる、そんな生き方をしていくのでしょう。末里は不器用ではありますが、意識して変わる必要など無いのです。

末里を巡る新たなライバルが出現

ほんのりレズが板についてきた菜摘。末里の家で3人一緒になって泊まることになったとき、一緒にお風呂に入れない事態になったため大声を上げながら泣いたりしています。とんでもなく楽しみだったのでしょう。それから温泉旅行が当たる商店街の福引券を40枚確保したりいざ温泉に末里と一緒に入るときには「頑張るぞー」と気合を入れ末里に抱きついているのです。結局それは日本猿だったので夢がかなうことはありませんでしたが。最早これは激しい友情もしくはレズと言って差し支え無いでしょう。読者としてはナイスとしか言えません。

そんな菜摘に強力なライバルの咲が現れます。咲は段々と出演回数が増え、いつもの3人と親交を深めていったのですが、ついに決定的なできごとがいくつか起こるのです。まずは運動会のとき、二人三脚で一緒に1位を取った末里にお礼を述べ「ありがとう鷲頭さん・・・じゃなくて 末里ちゃん…でいいかな」と言います。さらにミリィ・ザ・キャットというキャラクターを制作したのが末里の母親だと知り「これからもみーちゃんをよろしくお願いね」と言われ「一生大切にしますっ!!」と混乱しつつも宣言しているのです。

その結果どうなったかというと、咲は末里のパシリのような存在となりました。短期間で収まりましたがどうやら菜摘とは愛の形が違う模様です。咲にとって末里は尊敬の対象であり、愛する対象とはまた異なるのかもしれません。警戒していた菜摘はこれから咲に対してどう対応していくのでしょうか。特に愛するキャラクターであるミリィ・ザ・キャットのモデルが末里であるということを知った咲なので、もしかしたら咲の愛がより強くなっていくかもしれません。もし作品世界が続いていたらどうなっていたのでしょう。そんな妄想を楽しめるのも本作の魅力です。

まとめ

『ぐーぱん!』は確かに2006年から2011年の間に雑誌連載され単行本を3冊出して終了した漫画作品です。ですがそれはあくまで私達が明示的に見れる部分が無くなっただけ、と考えることができます。最終話が明示的に世界の終わりを告げているものではないということからも、この物語は私達の心の中でいつでも延長することができるというわけです。今までは『ぐーぱん!』世界を漫画と言う覗き窓から見ることができましたが、これからはその窓が無くなったというだけの話と言えるでしょう。

巻末で作者が「成長物語でも友情物語でもなく、あくまで楽しく笑えるギャグ漫画を目指して描きました」とあるように、本作は完全なエンディングを想定して作成されているわけでは無いのです。というか登場人物の彼女達が年齢を重ねない点からみてもやはり永遠性のある舞台と言うことができるでしょう。ということは読者はこれから先、自由に『ぐーぱん!』の世界を妄想しても構わないということです。『ぐーぱん!』は漫画作品としては終了しても世界としては私達の中に存在していると言えます。

これから先の『ぐーぱん!』世界を楽しみたいならいくらでも楽しむことができます。現実に「ここに末里がいたらどうしてるかな…」とか「菜摘だったらこんなとき無理矢理話しに割り込んでくるかも」といったように空想してみましょう。すぐさま彼女達はその場に現れて思い描いたとおりの行動を取ってくれるはずです。もしかしたら空想以上の言動をするかもしれません。そんなとき笑うことができたならそれ以上に素敵なことはありません。愛すべきキャラクター達はこれからも私達を楽しませてくれるでしょう。

オススメ度
★★★★★★★★★★ ★10

記事担当:くもすい

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