現代とは異なる高度に科学が発達した世界…そこでは現実世界を平行世界(パラレル)と呼び、現代社会の生きる気力を無くして倒れかねない人達を、電力を生きる気力に変換して充電する装置「リフレッシャー」を使用して、回復させることを事業とする会社が存在していました。

その会社に勤め充電する業務を担ったOL達、通称:充電ちゃんと呼ばれる彼女たちが、我々の世界であるパラレルに赴き今日も人知れず気力が減退した人々を充電して回っているのでした。互いの世界の物理法則の違いのよるものか、パラレルでは彼女たちは物理的な干渉を受けにくく、自由に空を飛べたり壁を通り抜けることも可能だったのです。

そんな彼女らの内の一人「ぷらぐ」と彼女たちの姿が見えない現実世界で、唯一彼女らの姿が見える「閃登」が出会い、協力して対象者に充電をほどこし、交流を重ねて成長し、世界の異なる人間同士でよりよい解決策を模索していくそんなお話です。

あらすじ

第1巻は充電二課で一所懸命に働くものの今ひとつ成果を上げられず失敗ばかりの社員「ぷらぐ・クライオスタット」が彼女たちの姿が見えて干渉出来る不可思議な少年「近江閃登」と出会う所から始まります。しかしその出会いは決してラブコメ的な形ではありませんでした。

ぷらぐたちは現実世界では自由に空を飛んだり壁などの障害物に遮られることなく移動をすることができるうえ、現実世界の人間には彼女らを視認することも出来ません。あるときぷらぐは対象の気力減退を計測出来る装置で、充電必要性の高いとある男性を見つけます。

要充電と判断した男性の周辺を下調べするためいつものように家の壁を通り抜けたところ、現実世界からは見えないはずのぷらぐを視認した閃登に、不審者と認識されバットでフルスイング殴打されるという、ヒロインとしてはありえないとても残念な出会い方をしてしまうのでした。

感想

典型的落ちこぼれ社員のぷらぐ・クライオスタット

1巻では初々しい一所懸命さ故の失敗の多さに定評がある充電ちゃん「ぷらぐ」と、ひょんなことから彼女と関わることになった「近江閃登」の家族達とその友人をぷらぐ自身が充電で助けていくことで、徐々にぷらぐと閃登が親しくなっていく様が描かれています。妹以外にはかなり辛辣で、ぷらぐにも厳しめに当たる閃登が家族を救って貰ったことで、性格上直接告げることは無いであろうぷらぐへの感謝の気持ちを徐々に持ち始めるところが、さりげなく描かれてて好印象でした。

1巻の中盤にはぷらぐとは対照的な出来る女の有能眼鏡っ娘OL「アレスタ」が登場し物語が少しずつ動いていきます。事務的に淡々と充電作業をこなす彼女のやり方に反対し、ぷらぐは少しずつ仕事のやり方を変え充電対象者に寄り添った形の方法へ切り替えていくこととなります。ちなみに私は眼鏡っ娘萌えなのでアレスタの容姿や性格、仕事に対する姿勢も好みだったりしますが、通常の読者なら、ぷらぐの方法や行動の方に好感を持つことでしょう。

ですが会社勤めは規則に従うことが大前提なわけで、それを破ったぷらぐは処分を受け監督しきれなかったアレスタも処分こそ受けなかったものの、ぷらぐと一緒に仕事をすることを強制されます。ですがアレスタも充電により人々を助ける一所懸命なぷらぐの姿勢に感化され次第に…てな事は無く、ぷらぐに巻き込まれた結果酷い目に遭うと言うオチが待っています。この話とコメディチックなオチがあることで1巻中盤までの濃くて沈みがちな物語進行が中和されていて良かったですね。

ただの直情暴力少年か?近江閃登

一話だけ見ると閃登君、かなり酷いヤツに描かれていて、父親に罵詈雑言、不審者とはいえ女の子にバットでフルスイング殴打と鬼畜クズの所行です。保険金云々の書き置きを見た後でも、善意で自殺を食い止めようとかそういった感じでは無く「死なれたら気分が悪い」というような自己中心的な動機で止めただけに見えます。ぷらぐが父親の生きる気力が減退し、警戒深度Aに達する程に悪化した原因を閃登だと確信したコマを見る限り普通のマンガなら閃登君は間違いなく「三下の悪役」です。

それが二話になると、ぷらぐ曰く家事全般をこなすスーパー主夫で、妹思いの良いお兄ちゃん、そしてぷらぐ達充電ちゃんの仕事について、それが対処療法で原因の治療では無いことをあっさり見抜いた洞察力の高さが描かれていて、粗暴さしか描かれてない一話閃登君とのギャップに「こいつ誰?」と思ってしまう人も多いでしょう。そんな洞察力があるのなら仕事優先した父親の事情も察してやれよと、思わずにはいられません。その原因が子供の頃の出来事だったのでトラウマになっており、頭の中では分かっていても感情が付いていかないと言う理由ならば、閃登が多少粗暴になってしまうのも仕方が無いのかもしれませんが。

そして妹の「はこね」の気力減退も、何でも一人でこなす閃登に原因があるとぷらぐは突き止めます。この部分での描写は一話とは少し異なり冗談めかしてあって、そのコマの閃登君を表すとすれば「朴念仁主人公」と言ったところでしょうか。一話の悪役よりはだいぶんマシに見えます。閃登の指摘に思うところがあったのか、ぷらぐは二話の冒頭であった出来事を生かした手で、はこねに手をさしのべた後で充電を成功させます。このエピソードの後ぷらぐは、充電はただ事務的に行うのでは無く対象者が助かる光明を見た後に充電することで高い効果が得られるという考えを抱いていったのでしょう。

萌えポイントはある?サービスシーンの見所

作品も1巻だとまだキャラクター描写が定まっていないようで、女性キャラクターは総じて可愛らしく、線の細い少女漫画的な従来のぢたま某氏のタッチでおおむね安定して描かれているのですが、閃登君の父親やモブなど年齢の高い男性キャラは、絵のタッチが安定せずに女性キャラとの対比に違和感が残ります。この辺は氏が今まで手がけてきた作品に大人の男性が出ることがほとんど無かったので、仕方が無いかなと思われます。萌え漫画としては十分女性キャラが可愛いく、主人公の少年それなりなので十分許容の範囲内です。

サービスシーンも氏の作品にしてはやや少なめで、マンガ内ではぴっちりした充電用作業スーツ(インシュレータースーツ)やパンチラぐらいなのが個人的には少々残念です。それを補う為なのか表紙裏には、お色気たっぷりのコミック書き下ろしカラーイラストが毎巻ついており、ちなみに第1巻は「作業用インシュレータースーツ姿のぷらぐが胸をはだけたイラスト」となっています。ぢたま某氏の趣味嗜好を知っている同志の方々は続巻に期待しましょう。

「ぢたま某」氏の漫画ということで第1巻を作者買いしたのですが、この少し後に刊行される、同作者のお色気一杯のほのぼの漫画「Kiss×sis~弟にキスしちゃダメですか?~」とはかなり雰囲気が異なります。充電ちゃんは割とシリアス展開の作品なので1巻を読み終えた後には、過去作の「まほろまてぃっく」の方に近い印象を抱きました。私は氏が稀に描くドロドロとした展開の物語が好きなので、物語重視の作品が好きな方には、Kiss×sisよりこちらをオススメしたいですね。

まとめ

ストーリーや出会いの展開にインパクトを与えるため、バットでぷらぐをぶん殴ることから始まる本作ですが、出会い以外にも、そして今後もボコボコ充電ちゃんを殴るシーンが、ちょくちょくでてきます。現実に考えるとかなり酷いことをしている閃登君ですが、半分お約束パターンになっているので、フィクションはフィクションとして、楽しむだけの力量が第1巻から読者に要求されてますね。まぁ昔(漫画版)のジャイアンもバットでのび太をボコボコにしていたので、それと似たようなものだと思うと良いでしょう。

1巻は連載開始前の予告漫画やインターミッションも掲載されており、それらも見所になっているのですが、閃登がぷらぐに発した言葉が、後の何度も充電する必要のある人が増えているリピーター問題など張った伏線などを少しずつ回収する話だけ見ても、今後が楽しみに思える展開となっています。そして閃登君には常時けんもほろろな態度をとられてしまうぷらぐの不憫さを愛でるのもこの作品の楽しみの一つでは無いかと(捻くれた)私は思っています。

アレスタはぷらぐと組んで何を学んでいくのか、非効率ではあるが対象に寄り添った充電方法が最善であると確信したぷらぐはこれからどのような充電対象と出会っていくのかといった定番展開はもちろん、本来見えないはずの異世界の充電ちゃん達を、何故近江閃登は見ることや触ることが出来るのか?一瞬だけ幽霊のようにぷらぐを視認出来た妹のはこねも含め閃登の家系に何か秘密があるのだろうか、その辺の伏線回収も気になるところです。

オススメ度
★★★★★★★★★☆ ★9