始まりがあれば終わりあり。榛名まおの『こずみっしょん!』はこの第2巻が最終巻となります。正直なところこれだけ面白いのだからもっと巻数が続いていてもおかしくないどころか、続くべきだった作品だとさえ思えるほどです。

短命となった『こずみっしょん!』ですがきちんとラストが描かれているのでコンパクトなストーリーとして完結しています。ラストへの導入から集結まで向かう流れは非常にスムーズで読んでいて思わず引き込まれてしまうでしょう。

また、新たに部長の過去が判明したり新しいキャラクターも登場する点にも注目です。かわいらしい臣美のライバルも登場し、彼女は意外なキーパーソンだったりもします。では『こずみっしょん!』最終巻について見ていきましょう。

あらすじ

真木鈴子(まき すずこ)は樺山女子学院に通う高校一年生。同級生の宇宙人である星垣臣美(ほしがき おみみ)と楽しい学校生活を送っています。2人は不思議解明部という部活に所属していて、部長の樺山奈央(かばやま なお)や奈央の付き添いの黒瀬ハナ子(くろせ はなこ)それから犬のような宇宙生命体オステオロキオンと一緒に部活動に勤しんでいるのです。

そんな中、臣美の昔の同級生と名乗る天月未知琉(あまつき みちる)が転校生として転入してきました。臣美と仲良くする鈴子に敵意むき出しの未知琉ですが、難なく溶け込み不思議解明部の一員になりますます学校生活は賑わいます。

ですが突然、臣美は母星から帰還命令を下されてしまいました。そこで明かされる臣美の真の目的、そして母星であるアガラトが導き出した結論とは。果たして臣美や未知琉はもう鈴子たちと逢えないのでしょうか。ラストの展開に要注目です。

感想

誰もがもっている後ろ暗さを解決したときに見えるものとは

『こずみっしょん!』のキャラクター達にはそれぞれ影があります。鈴子はぼっちで人付き合いが苦手ですし、臣美も地球に来た目的をひた隠しにしています。また、不思議解明部の部長である奈央も過去は表情が暗く、ハナ子と出会うまでは陰鬱な人生でした。ところが現在はどうかというと、鈴子は臣美という親友を得ましたし、奈央もハナ子によって救われ、ハナ子は奈央の人柄に惹かれています。影があるからこそキャラクターは人物としての深みを増し、そしてそれを克服することによってより魅力的な存在へと昇華するわけです。『こずみっしょん!』はそんな人間観を教えてくれています。なお臣美の影はラストでの解決を期待していて下さい。

漫画のキャラクターというのはもちろん架空の存在であり、私達の生きている世界へとにゅにゅっと飛び出てくれはしません。あくまでも紙面のインクや電子書籍のドットで表現されている創作物です。だからといって臣美や鈴子には存在価値が無いか、というとそうではありません。もしそうだとしたら、同じように目の前に現れてはくれないミュージシャンや著名人にも価値は無いということになってしまいます。彼女達は歴とした1つの存在であり、決してないがしろにされるべき存在では無いのです。そう考えると、彼女達の経た成長過程は私達に影とその克服についての示唆を与えてくれます。

影は私達が存在する以上、どうしても付きまとうものです。ですがこの影を克服することができれば、きっと楽しい日々が待っています。この物語は影を抱くキャラクターと、その影を克服する過程、それからその後を描いていると言えるでしょう。当初は地球人に敵対していた未知琉がお菓子によって懐柔されみるみるうちに幼女化する様は幸せそのものです。後ろ暗いことを乗り越えたとき、人間と言う存在は輝き始めます。本作は現実に解決することが難しい影を克服した理想的な美少女達の物語、と言うこともできるでしょう。『こずみっしょん!』はある種のパラダイスを描いた作品なのです。

余りに短命!もっと続くべきだった傑作萌え漫画

本作の悪い点と言えばやはり短命だったことに尽きます。全2巻というのは終わるのには早すぎますし、あまりに惜しい。もっと続いていて欲しかった作品です。本作は『まんがタイムきららMAX』に2011年から2014年にかけて連載されていましたが、その時期には丁度『きんいろモザイク』や『ご注文はうさぎですか?』といった強力なライバルが連載を始めた時期でした。アニメ化も果たすほどの作品が並んでいたため、長期に渡り支持を集めることは難しかったのかもしれません。

もし連載が続いていたらどうなっていたでしょうか。もしかしたら奈央の過去編を掘り下げた話があったかもしれませんし、ハナ子の素性がより明らかにされた可能性もあります。また未知琉の家庭環境や臣美との過去も気になりますし、アガルタとの交流が読めたかもしれません。ですが最早『こずみっしょん!』は終了しました。そのため現在では読者が書き手となって同人作品や自分のための『こずみっしょん!』の続きを描くより他は無いでしょう。

傑作と称される漫画は時として神のいたずらにより短命に終わってしまいます。タイミングや世の流れ、そうした読み切れない何かが原因となって作品を終了させてしまうのです。『こずみっしょん!』はそんな作品の1つと言えるでしょう。ですが鈴子や臣美はいつまでも読者の心の中で生きています。もしまた『こずみっしょん!』の世界に浸りたいなら漫画を開けば直ぐに出会うこともできます。短い物語でしたが、彼女達に出会うことができ、彼女達のかわいらしさや成長を見守ることができただけでも幸せだったと思っておきましょう。

やっぱりかわいいキャラクターたちの萌え姿

先述したように小難しい話をすると何だか壮大で深淵な物語のように思えるかもしれませんが、本作はあくまで萌え系4コマ漫画です。たっぷり萌えポイントがあるのでいくつか見ていきましょう。まずは巻頭カラーの臣美による猫のモノマネ!鈴子に宇宙人ならではの特殊能力を尋ねられた臣美は得意げに「んにゃーおっ にゃーっ にゃーおんっ」と猫の鳴きまねをしつつ手を猫の手にするのです。それを見た鈴子は当然萌え熱にあてられるわけですが、それも仕方ありません。やはり臣美は途方も無いポテンシャルを秘めています。

それから臣美と言えば体育祭の回での表紙が素晴らしいですね。ハーフパンツ姿でお尻をこちらに向けつつ横顔を見せているのですが、この表紙はハーフパンツの良さを読者に教えてくれます。ブルマとハーフパンツの論争に一石を投じる絵と言えるかもしれません。また、本巻で初登場かつ表紙を飾る未知琉もかわいい。お菓子をあげればあげるだけオートで食べるような、小動物的なかわいさに満ち溢れています。なお未知琉はラストで鍵を握る人物なので実は重要キャラクターなのです。

新登場のキャラクターというと志水あやめにも注目です。作品内ではカナが振られていませんが、恐らく読みは「しみず あやめ」でしょう。彼女の正体を知ったときには驚くかもしれません。ある謎を秘めたキャラクターだったりするのです。薄幸そうなショートカットのこの娘にももっと登場して欲しいものでした。このように、本巻はきちんと萌えがあらゆるところに散りばめられているのでそれを目当てに読み進めるのも良いでしょう。かわいい女の子が活躍するという萌え漫画の魅力を味わうことができるはずです。

まとめ

『こずみっしょん!』は本巻をもってお終いです。短命となった作品ですが何故打ち切られたのか分からないほど面白い漫画です。キャラクターたちにはそれぞれ影があり、だからこそ美しく、また影を克服した後の様子も見ていてほほえましくなるほどとなっています。自分の中の後ろ暗い要素というのは人間である以上、そうそう取り除くことはできません。ですがそれがもしも克服できたなら…そんな「もしも」の世界を美少女を通して描いた作品こそ『こずみっしょん!』なのです。

もちろんそうした事を抜きにして、ただ単に登場人物たちのデザインが秀逸であることも大きな魅力です。臣美は素直でクールで真面目なかわいいキャラクターですが、特にかわいくなるのが焦っているときとなります。素直なクールっ娘がうろたえているというのは萌え市場でも高値がつくほどです。萌えのセリに来た萌え業者が次々と値札を更新していく光景が目に浮かびます。またそれを引き立てるのが鈴子というキャラクターで、臣美をよりかわいい存在へと進化させてくれているのです。

影とその克服によりキャラクターへ深みを持たせ、かつ造形的にも秀逸なキャラクターたちが活躍する『こずみっしょん!』の世界を是非味わってみて下さい。ストーリー漫画とも萌え漫画とも言い切れない本作は唯一無二の作品として仕上がっています。欲を言えば続刊が欲しいところですが、そこは各自脳内で補完するなり描くなりしましょう。ラストの読後感も良い『こずみっしょん!』は萌え漫画として自信をもってお勧めできる作品です。

オススメ度
★★★★★★★★★★ ★10

記事担当:くもすい