トリコロ 1 (まんがタイムコミックス)

現在では「萌え系漫画」が広く認知され、アニメ化する作品も増えましたよね。萌えを題材とする漫画雑誌も2000年代の前半から創刊され続けている印象を受けます。今回ご紹介する「トリコロ」も、そんな「萌え系漫画」の意識が変化しつつあった2000年代前半の作品なのです。

「トリコロ1」は海藍(はいらん)先生によって描かれた萌え系4コマ漫画です。三者三葉やゆゆ式などが連載されている「まんがタイムきらら」にて創刊時の2002年から2005年まで、その後も「月刊コミック電撃大王」で連載が続きました。

主人公の七瀬八重(ななせやえ)を中心に、同い年の高校生たち4人組が繰り広げる日常は、素朴ながら掛け替えのない生活を描写しています。萌え系4コマ漫画の教科書として、時代が変わっても作品の素晴らしさは変わらない名作です。

あらすじ

七瀬家には主人公で優しい性格をしている七瀬八重と、元棋士である母親の幸江(さちえ)が住んでいました。ある日母親の気まぐれなのか、母親の友人のお子さんだという青野真紀子(あおのまきし)と由崎多汰美(ゆざきたたみ)が七瀬家に下宿することになったのです。

急な話に驚く八重でしたが、同じ高校生で同級生の真紀子と多汰美とすぐに打ち解けて仲良くなるのでした。さらに同じ高校に通うことになり、同級生で八重にスキンシップをよく図る潦景子(にわたずみけいこ)も加わって楽しい日常を送っていきます。

大きな出来事が起こるわけでもなく、他愛もない日常生活の中での会話や4人が一緒にどこかへ遊びに行くなど、特別でないようで掛け替えのない日常生活が続いていきます。そんな毎日を八重たちは過ごしていくのでした。

感想

萌え系4コマ漫画の教科書的な作品

「トリコロ」の世界観は、日常系作品の醍醐味である家族や友達たちとの生活が優しい眼差しで描かれています。主人公の八重を中心に決して大きな事件が起こるわけでも、誰かが苦しむ描写も1巻にはあまりありません。日常漫画の基本がほとんど含まれる作品なので、最後までゆったりと読むことができました。一つ屋根の下で同級生との生活は素朴でありながら楽しく描かれ、「友達と毎日が楽しそうで羨ましいな~」とも思いましたね。

キャラクターたちが話す日常会話のリズムも心地良く、流れるように物語の世界観に入ることができます。人物たちの掛け合いにも著者の拘りを感じますし、その掛け合いも自然なので違和感はありません。普通に八重たちの会話を友達になって聞いているような感覚になれる漫画ですね。ですから世界観に入りやすい敷居の低さがこの作品にはあって、読者の方も直ぐにキャラクターたちと一緒に過ごしているような感覚になれる作品だと考えています。

日常生活の中で八重たちの学校生活の他に、銭湯にいったり懸賞で当たったカメラで写真を撮ったりと素朴な生活が羨ましいです。羨ましという感情は他の日常漫画にも抱く感情ですが「トリコロ」ではこの関係が永遠に続かないような切なさもあります。そのような描写は1巻にはありませんが、そう感じるのは作品の雰囲気のせいかもしれませんね。八重たちが高校2年という設定にも著者の方に意図があって、主要キャラクターである4人のこれからが気になりました。

萌え系漫画の初期作品としての特徴

「トリコロ」は2000年代前半の作品なので時々ではありますが、ネタが古いと感じてしまう話があります。しかし、全体的な物語展開は数十年前の作品とは思えないほど、現在読んでも通用する話ばかりです。日常系漫画は連載中の時事ネタを入れることが多く、トリコロも例外ではありませんが、それらのネタが古くならずに読める作品が少ないと思います。メリットとして「そういえば昔はこんなことがあったな~」と懐かしみながら楽しめるでしょう。

表紙からも分かるとおりキャラクターの絵に癖があります。読んでいくうちに慣れてきますが、表紙の八重ちゃんの絵で敬遠してしまう方は少なからずいるでしょう。萌え系漫画の初期にあたる作品ですから、現在主流の絵柄とは大きな差があるのは当然ですよね。また初めはキャラクターの区別が難しいと思います。特に主人公の八重と多汰美は見分けがつかずに混乱してしまいました。この問題についても読み進めていく内に慣れていきます。

トリコロの著者である海藍先生についてですが、不定期で自身のホームページにイラストを乗せていますが現在では新作の商業漫画を描いていません。トリコロも全2巻と電撃コミックEXのMW-1056 が1巻だけ発売されています。トリコロを読みたくても新品の入手は難しく、購入するのだったら電子書籍化を待つか中古品で購入することになるので、読むための環境には恵まれていません。発売から年数が経つ作品ですから仕方がないことですが、そのような欠点を補うほどに素晴らしい作品だと思っています。

キャラクターの優しさや普通の日常生活が素敵

トリコロに登場するキャラクターは魅力的です。主人公の八重ちゃんは他人の思いやる優しい性格で料理が得意です。時々S気を感じさせる言動も可愛らしい。皆の妹的存在ですし、周りの人間とはあまり話さない景子に懐かれている様子も微笑ましいですね。同居人である真紀子は大阪出身の眼鏡っ子。常識人ですが料理が苦手で調理実習では野菜炒めを焦がしてしまいました。トリコロのツッコミ担当ですが、皆のお姉さん的立場のキャラクターですね。

多汰美は広島出身で、やたら動物に好かれます。スポーツが出来て突拍子もないことを口走るので4人の中ではムードメーカーでもあり、真紀子と同じで料理が不得意ですね。真紀子と多汰美に共通する点は方言で話すことや、八重と同じで優しい所です。3人は本当の姉妹のようで、作中では間違えられていました。もちろん血は繋がっていないのにそう見えるのは強い絆で繋がっているからではないでしょうか。そのような関係性は素晴らしいですよね。

潦景子は素直になれない同級生ですが、八重のことになると豹変する様が面白いです。八重の美味しい料理を食べたことがキッカケに、3人とも一緒に仲良く過ごすようになります。少し百合的な要素も感じるキャラクターですね。忘れていけないのが八重の母親である幸江さんです。登場キャラクターで最も破天荒で、家の表札にも本当の子供ではない真紀子と多汰美の名前を堂々と書いています。しかも本当の娘であり長女の八重を三女と記載しているあたりが笑えますね。

まとめ

「トリコロ1」について感想を書いてきましたが、トリコロという4コマ漫画は日常系4コマ漫画として素晴らしい作品だと思います。古い作品ではありますが、古いというだけで敬遠するには勿体ないほどの完成度を誇り、「あずまんが大王」と並んで萌え系漫画の名作と評価されているのが納得できますね。また多くの萌え系作品に影響を与えたであろう設定や物語の展開があって、萌え系作品の教科書のような漫画作品ではないでしょうか。

そのように先駆者的な評価が目立つ作品ですが、私は「トリコロ」の優しい世界観が大好で、この世界観こそ評価されるべきだと思います。八重を含めたキャラクターたちも皆が優しいですし、主人公の八重が風邪を引いてしまった時は、皆が本当の家族のように心配する様子など、当たり前のように見えて実はとてつもなく重要なものを感じました。日常生活で普段は気付きにくい大切な要素を改めて再確認させてくれた4コマ漫画でもありますね。

トリコロは入手できる環境は優れませんが読んで損はない作品だと思います。日常漫画の楽しめる要素がしっかりとしているので、読みやすいことも特徴です。ですから萌え系漫画を初めて手に取る方にもオススメで、4人の日常生活を垣間見てノホホンと楽しめるでしょう。キャラクターも可愛らしく描かれていますし、個人的にはもっと多くの方に知ってもらいたい作品でもあります。特別な出来事は起こりませんが、掛け替えのない彼女たちの日常を一緒に体験できるような漫画です。

オススメ度
★★★★★★★★☆☆ ★8

記事担当:キリンリキのしっぽ