ついに最終第12巻を迎えた「お兄ちゃんのことなんかぜんぜん好きじゃないんだからねっ!!」です。いやー、本当にここまで色々なことがありました。第1巻で奈緒が自分が修輔と血が繋がっていないということを知っている事実を隠したことが全ての始まりでした。

そのことによって、様々な女の子が修輔に近付きアプローチをしたり、肩透かしを食わせたり、サイコな目に遭わせたりしてきました。この最終巻において、ついに奈緒は真実を告白します。最初は奈緒主人公で構想されたこともあって、奈緒の決断が物語のラストになります。

一体このおかしな兄と妹はどんな決断をしたのでしょうか?草野先生は莉智香編、穂澄編に引き続いて読者の予想を大きく外したラストを用意していますよ。私はこのラストには異議があります。賛否両論分かれる第12巻、スタートです。

あらすじ

現場に到着した奈緒は、穂澄の話を聞き味方になる振りをして外側から攻めていく。そこに剣吾が現れて――。(第79話)暴走した穂澄に巻き込まれた修輔は階段から落ち、怪我で入院することになる。彩葉はこんなことになったのは奈緒が態度をはっきりさせないからだと言う。(第80話)修輔は目を覚まし、穂澄編は一段落する。一方、奈緒は道で偶然、莉智香と再会する。(第81話)

莉智香に関係が変わることのメリットとデメリットを聞く奈緒。自慰絡みの話でなぜかショックを受ける奈緒だった。(第82話)奈緒と彩葉の最終決戦が始まる。しかし、全く議論が噛み合わない二人なのであった。(第83話)

大集結したヒロインズを前に、修輔の童貞の大切さを説く奈緒は、利害関係を一致させた全員を説得することに成功する。そしてついに奈緒は真実を修輔に話す。(第84話)奈緒は告白をし、修輔はそれを受け入れる。ハッピーエンド?(第85話)

感想

ついにグランドフィナーレ!修輔の選択は?

修輔を痴漢に仕立て上げて嵌めようとしていた穂澄の前に、奈緒と彩葉が現れたところまでが前巻の展開でした。強力な女の子が二人も現れて頼もしい限りだったのですが、さらにその上に剣吾もかけつけてくれます。ボス戦の時に今まで戦った仲間達が総終結するあれですね。奈緒の理詰めの追い込みと、剣吾の男女平等パンチが光ります。追い詰められて暴走した穂澄は、ドジって修輔を巻き添えにして階段から落ちてしまいます。繭佳編であった突然の事故で状況をうやむやにするというパターンです。

修輔はなんとか無事だったのですが、見舞いに訪れた病院で彩葉は奈緒に言います。「修ちゃんがこんな事になった責任…奈緒ちゃんにもあるって自覚してる?」「私だったら修ちゃんをあんな目に遭わせない!!」「樋川さんに近寄らせたりしなかったっ!!」全ては奈緒が態度をはっきりとさせないからこそ起こった出来事なのです。彩葉は恋のライバルであるのですが、こう叱責することによって奈緒の背中を押しているのです。登場した当初は自己中心的で策士の悪い娘さんなのだと思っていましたが、一番素直で素敵な女の子に成長してくれました。

おちんこ全体を通して言えることは、単なる萌え漫画というだけではなく毎エピソードで工夫をこらしたストーリーが展開されたことでした。萌え漫画の中には絵は綺麗だけど読み進めにくいものがあるのですが、おちんこは絵が綺麗で漫画ストーリの技術が優れていて、次から次へと読んでいくことができました。それぞれのエピソードの結末に賛否両論があったとしても、漫画として面白く優れているということは間違いありません。萌え漫画を読んでいたはずなのに、本当に何度も騙されてしまいました。

個人的にはこの結末に納得できない

街中で莉智香とばったり出会った奈緒は、兄妹(莉智香の場合は姉弟)で付き合うことのメリットとデメリットを聞きます。私の感想はと言えば……「ガチの人の意見は参考にならんわ」ですね。とは言え、奈緒は全く違うベクトルで、莉智香の話にショックを受けてしまったようです。彩葉に屋上に呼び出されて修輔のことを問い詰められても「今はそんな些細な話をしてる場合じゃないんだよっ!!」と逆切れしています。奈緒は力説します。

童貞じゃなくなったら、お兄ちゃんは今までのようなお兄ちゃんではなくなってしまう――。奈緒が大好きな修輔というお兄ちゃんは、この12巻を通して一切変わることがなかった少し残念な兄なのでした。そしてヒロインズが全員集合しても、奈緒は一人で残念な修輔の素晴らしさを説き、修輔に童貞を捨てさせてはいけないと力説し始めたのです。確かに物語としてはそういう理屈をこねることはできると思うのです。でも、私はこの奈緒の考え方に一切共感を持つことができませんでした。

修輔の個性が好きだとか、修輔の駄目な部分も含めて好きだということもわかるんです。まぁ、ギリギリ駄目なところこそが好きなんだという考えにも理解を示しましょう。でも、その駄目な部分を無理矢理維持させようと行動するのは何なのでしょうか?人は変わるし、その変わっていく部分や過程を含めて好きになるべきじゃないでしょうか。奈緒は今まで修輔の性的嗜好をコントロールしようとしてきましたが、今度は修輔の人生を裏からコントロールしようとしているのです。

テーマを回収しての感動?のラスト

私は奈緒は穂澄レベルにサイコなんじゃないかなぁ、とこの結末をみて思ってしまいました。ただ、最終話の奈緒の告白と修輔の返事の部分は美しいシーンとして完成していますね。なんだろうな。やはりこの物語は奈緒が少し動けば、その瞬間に終わってしまう物語だったということも明らかになってしまっています。二人は最初から恋人で、その間のことを引きのばしていただけだったのです。あだち充の「みゆき」と同じですね。みゆきと違うのは奈緒がかなり変わった女の子だということぐらいです。

互いの気持ちを確かめ合った後、奈緒は言います。「一番大好きなのは――自分の妹に邪な感情を持っている――変態なお兄ちゃん――」「お兄ちゃんが本当に私の事好きだったら――」「今の清い身体のお兄ちゃんのまま30歳を迎えてほしいのっ…」いや、何言っているんでしょうね、この娘は。30歳まで待たされた時に、奈緒も若いままだったらいいのですがアラサ―ですよ?奈緒が今まで作り上げてきた修輔の性的嗜好から多分外れてしまっていますよ。

駄目な兄を駄目なままに好きになる妹――といった「おちんこ」の設定やテーマは上手く拾えていると思いますが、修輔の今後のことを考えると何だかもやもやしてしまいます。ただ、奈緒がまたこうした中途半端な決断を下したことで、修輔をとりまくハーレム自体は維持されてしまうようですね。穂澄や繭佳はいいとしても、彩葉はまた延々と初恋の片思いの呪縛に囚われてしまう運命になってしまいます。彩葉という女の子は、奈緒の恋のスパイスのために生きているんじゃないんですよ。綺麗に終わっている感じですが、同時に残酷なラストでもあるのです。

まとめ

とうとう「おちんこ」も12巻で終わってしまいました。私が途中から応援を始めた土浦彩葉は、やはり幼馴染という呪縛によって勝利ヒロインになることはできませんでした。ラブコメを読み続けて二十年、私は何人の幼馴染の亡骸に手を合わせてきたことでしょうか。ずっと昔から奈緒に魅入られて、奈緒に性的嗜好を操作され続けてきた修輔は奈緒を選んでしまったのですが、どう考えても彩葉を選んでいたほうが幸せになったんじゃないかなと思います。

ただ、実際に彩葉を選んだとすると奈緒が死んでしまいかねないので、結局耐える力、諦める力を持っていそうな彩葉が敗北することが平和ではあったのかもしれません。ラブコメの世界においては善人は貧乏くじを引いて、己の欲望のままに突き進んだものが勝利を収めてしまうのです。私は最終巻の落とし方にはあんまり納得がいかなかったので、10点満点中の8点を付けましたが、おちんこ12巻全てで評価をすれば9点はある漫画だと思います。10点は……ちょっと褒め過ぎでしょう。

奈緒が修輔の童貞を守るとかおかしな判断をした隙を出し抜いて、彩葉には奈緒にNTRをかましてやって欲しいですね。若くして脱童貞をしてしまった時、奈緒は修輔を好きでい続けることができるのでしょうか?それはそれで新しいテーマと物語性を孕んでいると思います。というのはさておき、最後まで色々な仕掛けや意外な展開を作ってくださったので、飽きることなく読むことができました。これは並みの漫画家ではできないことです。今後も女の子がかわいくて、ストーリーに起伏のある漫画を描いていって欲しいです。草野先生、楽しい漫画読書体験をさせていただいてありがとうございました。

オススメ度
★★★★★★★★☆☆ ★8

記事担当:カオス