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美少女幽霊早川さんがかわい過ぎる「死人の声をきくがよい」第1巻です。主人公・岸田の幼馴染の早川涼子は登場早々殺されていて、幽霊として登場します。昨今の「幽霊+萌え」ものとは違って、ガチの殺され方をしていますし、お色気全開で攻めてくるタイプの物語ではありません。

巻末漫画によると「ラノベみたいなのを書いて」と編集に言われてできたのがこの作品らしいのですが、ホラー漫画としてのおどろおどろしさや、面白さを全く捨てることができていないのです。ですので、萌えよりもまずはお話の面白さに熱中するタイプの作品ですね。

じゃあ、萌えないのかというと滅茶苦茶萌えます。登場する美少女にはギャグ調な人もいますが、メインの美少女幽霊早川さんは存在の仕方から、関係性から、仕草から、キャラデザインから萌えの宝石箱になっています。下手に狙わなくてもこんなにも萌える作品ができるのです。それでは「死人の声をきくがよい」スタートです。

あらすじ

岸田には死んだ人間の姿が見えるという力があった。岸田は失踪していた早川涼子の幽霊を見つけ、後についていく。(第1話)郷土史研究会の日帰り調査で間吊島に行くことになった岸田たち。そこはおぞましい者達が潜む島だった!式野会長登場回。(第2話)

従姉のミユに頼まれ廃墟になった遊園地を案内することになった岸田。ミユは魅入られたように毎日廃墟に通うようになって……。(第3話)岸田たちはオカルト研究会の調査で河童伝説のある寺を訪ねることになる。式野会長が開けてはならない箱を開けてしまい……。(第4話)

岸田の家に一人の女生徒がトイレを借りにやってきたのだが、姿が見えなくなってしまう。(第5話)占星術師の母親が出る番組の手伝いとして、釘澤邸に連れてこられた岸田だったが、それは惨劇の幕開けに過ぎなかった……。魔子さん登場回。(第6話)

感想

美少女幽霊早川さんが萌えな本格B級ホラーが登場!

第1話においてメインヒロインが猟奇殺人者に惨殺させてしまっている萌え漫画がどこにあるでしょうか?はい、ここにあるのですね。本作のメインヒロイン早川涼子は事故や病気という比較的美しい死に方ではなく、ザックザクのグログロに殺されてしまっています。主人公で霊感が強く幽霊の姿がみえる岸田は、そんな早川さんの姿を見ることができました。第1話において、岸田は早川さんに導かれて事件解決にまで辿り着くのですが、早川さんはそのまま成仏したりはせずに岸田の傍に居続けます。

普通の漫画だったら、早川さんが色々と話しをしそうなものですが、本作において早川さんは指で指し示すだけで一切言葉を話しません。表情と仕草だけで岸田に何かを伝えようとするのですね。クール系ヒロインの系譜である綾波、長門でも多少は話すこともあるのと比べても特別です。早川さんが何も話さないことがかえって主人公の岸田との絆を感じさせて、上手く機能していると思います。早川さんは幽霊として特に強い能力を持っているわけではなく、危険を指し示すだけです。

岸田と早川さんの関係は、小さい頃はよく遊んだけれど思春期になってお互いに少し疎遠になってしまった――というものですね。二人の関係から漂う切なさや懐かしさ退廃的な感じに惹きつけられてしまいます。岸田もイケメンな面立ちをしているので、美少年・美少女のペアで見ているだけで美しいです。早川さんという最強の萌えキャラを投入することによって、メジャー化に成功した作品ということができそうですね。1キャラだけで他作を圧倒できるポテンシャルを秘めている作品です。

ホラーなのでグロくてB級なところもあるよ

作者のひよどり祥子先生は、マイナーホラー誌などで長年活動を続けられていたようで、巻末に知り合いの漫画家達からの推薦の言葉が載っています。その推薦人たちは「押切蓮介」「伊藤潤二」「高橋葉介」「三家本礼」と、ホラーにおいて大きな業績を残した漫画家さん達ばかりです。みんな「ホラーとしてすごい」と言っています。まぁ、そうなんですけど、本作の成功の理由は早川さんがかわいいから――に他ありません。押切蓮介が「でろでろ」において妹を可愛く描くことで成功したことに似ています。

女の子の可愛さを抜くと、この漫画で描かれているのは古き良きB級ホラーの世界でしかありません。毎回のように人はグログロに死んでいきますし、幽霊系のホラーだけではなく宇宙人系のホラーまで出てくる始末です。80年代90年代のホラーのごった煮とでもいいましょうか。好きな人には堪らないお話ではあるのですが、それだけでは一般の漫画読みが好んで読むようなものにはなりにくいのですよね。早川さんやこの後紹介する式野会長が出てくることによって、現代でも一線を張れるホラー漫画が復活した――というところでしょうか。

メインキャラ以外はホラーな死に方をしまくることが多いので、ホラー耐性が低い人にはお奨めできないかもしれませんね。それに萌え要素があると言っても、直接的なエロ描写はほとんどない漫画です。早川さんのかわいさはそういう安易なエロに頼る必要はなく、十分物語の中で伝わるものだからです。美少女達のきわどいエロシーンを期待する人の欲望にはストレートに応えてくれない漫画でもあります。それでいて強く萌えを感じるのですから不思議なものです。

シリアスキラーな式野会長と小泉

郷土文化研究会改めオカルト研究会の式野会長と、その外見の魅力につられてオカ研に入った岸田の親友の小泉は、この作品において「シリアスキラー」な立ち位置になっています。シリアスキラーというのは、連続殺人鬼のシリアルキラーではなくて、どんなホラーな状況もギャグに変えてしまう存在のことです。岸田と早川さんだけだったら、シリアス尽くしになってしまいかねないところを、この二人の存在がコミカルな漫画として本作を成立させています。

式野会長は眼鏡で巨乳の郷土文化研究会の人気者という描写で登場します。本作では早川さんに次ぐレベルでグットルッキングに描かれているキャラクターですね。普通の萌え漫画だったら、二番目のヒロインとして主人公にアプローチしてきそうな感じです。でもこの漫画は普通じゃないので、式野会長の役割も全く違ったものになっています。第2話で郷土文化研究会の面々はホラーな目に遭って追い詰められてしまうのですが、式野会長はそこで本性を現したのでした。

それがどんな本性だったかはさておいて、式野会長も小泉も死人があまりにも多いこの作品において絶対死なないキャラクターなのですよね。小泉はなんとか運よく助かっているパターンで、式野会長はその驚異的な生への執着心によって生き残ってしまうタイプです。レギュラーキャラクターとしてこの二人がいるからこそ、事件も起こしやすいですし、悲劇的過ぎるラストを避けることができています。式野会長は性格はアレ過ぎるのですが、生きている女の子!という感じで、早川さんを際立たせる働きもしていますね。

まとめ

表紙をよく見ると「死人の声をきくがよい」の第1巻には「1」のナンバリングがしてありません。掲載紙のチャンピオンREDは、業界の周縁部から拾い上げて実験をすることの多い漫画誌で、「死人~」もそこまで積極的に2巻目を出すつもりがなかったということなのでしょう。とは言え、ここまで魅力的に描かれてしまった作品が人気にならないわけはなかったのです。今は続々と続刊が出て2ケタ台に届く勢いになっていますね。よい作品がしっかり評価されるのは、読者としても嬉しい限りです。

ひよどり祥子先生はこの作品以外にも何冊が作品を出されていて、そのどれも絵が綺麗でホラーテイストが溢れているのですが、本作ほどメインキャラクターを立てることができていません。やはり本作の成功は、喋らない幽霊キャラの早川さんに帰するところが大きいですね。岸田と早川さんの関係性が素晴らし過ぎて、それだけでご飯を三杯くらいおかわりしてしまえそうです。「主人公の男の子が幼なじみの幽霊やらいろんな女の子に囲まれてキャッキャウフフな内容の作品をホラー漫画家が描いた………」

と巻末でひよどり先生が言っていますがまぁ自虐ギャグですよね。範馬勇次郎は言いました。「争うな持ち味をイカせッッ」ひよどり先生はホラーな持ち味を生かしたまま、早川さんという最高の調味料を入れることによってB級ホラー漫画家のままメジャー化することに成功したのです。チャンピオン系はアニメより実写のほうが強いイメージがありますので、深夜ドラマや映画化などに期待したい作品です。岸田と早川さんの素敵な関係を描いてくれて、ひよりどり祥子先生、ありがとうございます!

オススメ度
★★★★★★★★★★ ★10

記事担当:カオス

主に青年誌のラブコメ・エロコメを好む30代男子。「変女」推し。

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