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恋の撮り方 (1) (電撃コミックスNEXT)

皆さんは恋をしていますか?……え、してない?そうですか、悲しい事です。でも、それでは話がここで終わってしまうので、している体で聞いてください。

では、次の質問。もし、あなたの持っているカメラの中に、好きな女の子が棲み着いたとしたらどんな写真を撮りますか?カメラの中の彼女は現実では見せたことのないあんなポーズやこんな表情をあなたの思い描いた通りに見せてくれます。恐らく、9割以上の方がエッチな妄想をしたことでしょう。僕もです。

そんなやましい心を持った読者諸兄にぜひ読んでいただきたいのが、今回ご紹介するたなかのか先生の『恋の撮り方』。淡い青春の恋心をカメラのレンズ越しに映し出した恋物語が、きっとあなたの心を優しく包んでくれるはずです。

あらすじ

この春から高校生になった河島まもるは、入学式当日、校舎へと続く並木道を見て違和感を覚える。入学案内のパンフレットに写っていた写真ではもっと綺麗だったはずなのに……どうして現実よりも写真の方が美しく見えるんだろう?

そんな彼の前に、現実よりも美しい並木道の写真を撮った張本人、佐々木つぐみが現れた。彼女の強引な勧誘により、まもるはなし崩し的に写真部へと入部することになる。

写真部からフィルムカメラを与えられたまもるは、初めての被写体としてつぐみを選ぶ。春風に吹かれる儚げな彼女の姿を写真に収めた時、まもるの恋は始まりを告げる。そして、それと同時に、彼だけにしか見えないもう一人のつぐみがカメラの中に棲み着いたのだった。

本作の見所

写真に写る二人のつぐみ先輩

本作の内容を端的に説明すると、一目惚れした女の子の幻覚がカメラ越しに見えるようになってしまった純粋過ぎる男の子の恋物語を描いた漫画となります。好きな女の子の幻覚が見えてる時点でわりとヤバイ話だ、と思う方もいるかもしれませんがそんなことはありません。いや、実際ヤバイところもあるんですけどそれだけじゃない。主人公のまもるはカメラの中のつぐみ先輩(通称・なかみ先輩)にエッチなポーズをさせたり破廉恥なセリフを言わせたりしません。

凍てつきの女神」とも呼ばれるつぐみ先輩は笑顔を見せないことで有名。まもるは彼女の笑顔を写真に収めるために奮闘するのですが、どうやってもつぐみ先輩は笑ってくれない!その一方で、カメラの中だけに存在するなかみ先輩はつぐみ先輩とは似ても似つかないほど表情豊か。同じ顔をしているのにここまで正反対な性格なのはいったいどうして?

カメラを通してつぐみ先輩となかみ先輩を追いかけていく内に、まもるは気づきます。なかみ先輩とはつぐみ先輩の本心(なかみ)を具現化した存在なのだと。表面上は無愛想に振る舞っているつぐみ先輩も本心では、なかみ先輩のように無邪気な笑顔を浮かべている。そんな二人の先輩の対比こそが、本作最大の魅力なのです。

淡く儚げなつぐみ先輩の美しさ

ドキッとする表情でドキッとするセリフを言っているつぐみ先輩ですが、別にエッチなシチュエーションではありません。食べ物の写真を取る際に人工の光が邪魔なため、電気を消すように言っているだけです。まあでも、男なら反応せざるを得ないセリフですよね。

本作の面白いところはカメラの中にいる幻のなかみ先輩よりも、現実に存在するつぐみ先輩の方が淡く儚げに描かれているところ。ここぞという時の描線の使い方が非常に繊細で、漫画のコマがまるでカメラのフレームのようにつぐみ先輩の美しさを鮮明に切り取ってくれます。

なかみ先輩とは違い、基本的には表情に変化のないつぐみ先輩ですが、時折、頬を赤く染めて照れてみたり死んだ目で落ち込んでみたりと感情を表に出すことも。感情のすべてを好きなだけ爆発させているなかみ先輩とは違い、抑えきれない気持ちがちょこっとだけ滲み出てしまうつぐみ先輩にはどうしようもない愛おしさを感じてしまいます。

明るく笑うなかみ先輩のかわいらしさ

見てくださいよ、この笑顔!どこをどう見たら「凍てつきの女神」なんてあだ名がつけられるのか不思議になるくらいの満面の笑み!現実のつぐみ先輩が一切笑わないだけに、この笑顔にはとてつもない破壊力があります。

しかし、なかみ先輩の魅力は笑顔だけではありません。つぐみ先輩が絶対着ないようなフリフリの洋服を「着たい着たい!」とせがんでみたり、春の日差しを浴びながら無防備にまどろんでみたりと、とにかく無邪気でかわいすぎる!つぐみ先輩のクールさが際立つほどなかみ先輩の無邪気さが引き立てられ、なかみ先輩のキュートさが際立つほどつぐみ先輩の美しさが引き立てられる。これぞ萌えの永久機関!

ちなみに、つぐみ先輩となかみ先輩を見分ける一つの目印として制服の色があります。つぐみ先輩は白のセーラー服、なかみ先輩は黒のセーラー服を着ています。私服や体操服になっている時も基本的に白と黒の対比で区別されているようです。もしかしたら、光と影をイメージしての表現かもしれませんね(性格における陰陽は逆さまになっているのがまた面白い)。

まとめ

レビューを書き終える度に思うのですが、作品の魅力のすべてを伝えきれている気がまるでしない……。かと言って長々と書き続けても冗長に過ぎますし、言葉をシンプルにギュッとまとめるのは本当に難しいです。

恋の撮り方』はそんな言葉の使い方がとても綺麗な作品でもあります。上のセリフはつぐみ先輩に憧れる写真部の二年生、ライカ先輩の言葉。こうした詩的で美しい表現が本作にはたっぷりと詰まっています。洗練された言葉とは余計なものを削ぎ落とすことで生まれるものなのだと改めて気付かされました。

つぐみ先輩となかみ先輩のかわいさに惹かれて読むのももちろんありなんですが、瑞々しい感性で描かれた思春期男子の恋物語を求めている渇いた男性にこそこの『恋の撮り方』を読んでもらいたい!そう、エッチな妄想ばっかりしてるそこのあなたですよ!たまには真っ直ぐな恋愛漫画を読んで、在りし日の淡い恋心に思いを馳せようではありませんか……。

物語の行間に潜む感情の機微を炙り出せるような記事を書きたいです。ショートカットで元気な女の子が大好きなので、オススメの作品があったらご一報ください。

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