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『兄の嫁と暮らしています。』は兄を亡くした女子校生志乃と義理の姉である希との共同生活を描いたマンガです。2巻は新キャラがぞくぞくと登場し、よりにぎやかになっていくのが特徴です。また、ギャグ回も頻繁に入るのがポイントです。

追加キャラには複雑な家庭環境のキャラも含まれているため、リアリティが増すような形になっています。1巻でちょいやくの登場となると思われたキャラが再登場するなど、世間の狭さを思わせるエピソードが入ったりもします。

姉と妹の認識のズレなどもうまく描き出されていて、それぞれが距離を詰めていく過程も丁寧に書かれています。不意に襲ってくる喪失感や胸の痛みのギャップも健在で、非常にメリハリのきいた内容になっています。胸の痛みとどう付き合っていくのか、今どう思っているのかがしっかり書かれているのです。

あらすじ

幼い頃に両親を亡くし、兄を亡くした志乃は天涯孤独の身となります。同居していた兄の嫁である希が出て行けば完全に1人になってしまう状態ですが、希の希望により二人で暮らすことが決まります。こうして血のつながらない二人の生活が始まっていくのです。

希に負担をかけているという負い目がある志乃は、三者面談の日程を話せないなど距離の詰め方に迷っています。それでも日々は過ぎていき、かつて所属していたバレー部の新入生に嫌われてみたり、拾ってきた猫に名前をつけたりと様々な事が起きます。

希は希でどのように志乃と距離をつめるかを迷っていて、とあるきっかけから積極的に話をしようと思い至ります。大切な事も、何気ない事も話したいと言う思いが二人を繋げていきます。なんとか三者面談について話す場をえた志乃を受け入れながら、希ももう少し話しかける用にしようと考えを改めていくのです。

感想

亡くした兄の存在が胸をえぐる展開は健在

兄嫁の特徴と言えば、大切な人を亡くした喪失感の描写です。志乃と希は別々な形で現実と向き合っていて、ふとした瞬間に痛みを感じるのが特徴です。何気ない日常を送っているからこそ痛みが胸をえぐる形になっていて、傷がいえていないことをはっきりと描く形になっています。かわいい絵柄とセンシティブなストーリーの組み合わせは健在です。特に2巻はお葬式を済ませた後の志乃の描写から入るなど、兄が無くなって二人で暮らすまでの間が描かれていて、非常に丁寧に心情が描かれているのです。

心の痛みも喜びも、背景になる情報がなければ共感し辛いケースがあります。特に悲しみなどの感情は感情移入のための描写が大切になります。兄が亡くなったという痛みに共感してもらうためには、それだけ愛していた、愛されていたという情報が大切です。志乃と希それぞれのエピソードを描いていて、しかも兄を通してつながりがあるのがわかる用になっています。二人にとってなくなった人は二人をつなぐ絆でもあり、亡くなった今でも大切な存在なのです。

ただ悲しいで終わるのではなく、後味を和らげるようにお互いが寂しさを埋めたり、笑わせたりするのも魅力です。お互いが兄がいないことを受け止めながら、お互いに助け合っているからです。それぞれに少しひねくれている部分があったり、頑固だったりする部分もありますが、お互いが思い合っているという確かな前提があるのもポイントです。人間の優しさや思いやりなどに触れられるストーリーになっています。また、優しさの裏にある少し暗い感情を書くことで、リアリティに磨きをかけているのも素晴らしい点です。

シリアスなエンディングと面白おかしい書下ろしのギャップ

2巻は非常にシリアスな終わり方をしています。具体的には志乃が二人の生活はいつか終わるのではと不安を抱えるような形になっていて、非常に衝撃的に書かれているからです。志乃の内面への影響の濃さもしっかり書かれているため、2巻本編の終わりでは非常にシリアスで重苦しくなってしまいます。ところが、おまけの書き下ろしマンガがギャグタッチ&癒し系担っているため、感情の切り替えに若干とまどいます。本編がシリアスだからこそ笑える部分があるとも言えます。

また、2巻の追加キャラは自分の意見をしっかりもっているキャラが多く、それぞれの心理を深くつく言葉を使う傾向があります。気持ちを踏み荒らされるのが苦手な人は、人物像だけで心が乱される可能性もあります。ただ、嫌味なキャラと言うわけではなく、必死な理由があったり、天然だったりとそれぞれに理由があります。理由があるから憎めないキャラばかりになってしまい、単純な善悪で判断出来ないのもポイントになっています。

兄嫁はあくまで兄、あるいは夫を亡くした二人の日常を描く作品です。そのため明確な善悪を受け持つキャラクターが存在し、それぞれ良いところと悪いところをもっているのです。志乃にも希にも昔からのつながりがあり、それぞれの形で思いやりが向けられています。ただし、異なる文化や背景をもった人が交流すれば衝突することもあります。そういった当たり前の事を当たり前に書いているだけとも言えます。それがリアリティである一方で、事件自体がストレスになる場合は心理的なダメージが大きくなる可能性があります。

夕立でぬれてしまったり、浴衣姿になったりサービスシーンも

兄嫁の魅力の一つがキャラクター造詣で、特に希のスタイルは目を引くものになっています。1巻でもサービスシーンがありましたが、女性二人で暮らしていると言うことで2巻も様々なサービスシーンがあり、浴衣の着付けのシーンや、夕立にあってぬれた姿なども描かれています。夕立でぬれた姿はそれほど強調されてはいないものの、アングル的には胸が強調される形になっているため、スケベ心がある人にはおすすめです。シーズン的には夏で、肌の露出も多めになっています。

夏祭りのシーンもあり、希のお古の浴衣を志乃に着せることになります。当然希と志乃の二人の浴衣姿が見られます。惚気なども挟まれますがこれは毎度の事で、二人のお祭りに対する感覚の違いも出ることになります。特に志乃は両親がいなかったため家庭的な料理を習ったり、着付けなどを習う機会が無く、希が姉として教える形になるのがポイントです。二人の交流のきっかけにもなっているため、ほのぼのとした空気も一緒に味わうことができます。

こっそりとした名シーンとなっているのが、カバー裏の読書をする希の姿です。珍しくめがねをしている状態であり、実は視力が悪いことがわかります。メガネ美人に萌える人は2巻の購入がおすすめです。志乃にメガネ姿を褒められて照れる姿も見所です。素直に喜ぶあたりが女子力を感じるポイントで、愛されキャラになるコツがわかります。2巻もおまけマンガが充実しているため、連載だけで読んでいる人は若干もったいない状態になっています。

まとめ

兄嫁2巻はストーリーの質が安定しているだけでなく、無理なく個性的なキャラクターを増やすことにも成功しています。無理にキャラクターを増やしすぎて内容が薄くなるケースは珍しくないため、世界観を広げる役割にも貢献しています。志乃や希以外にも離婚で家庭環境が複雑になっているキャラが出てくるため、それぞれに苦労があることがわかります。そして、日常を送れる余裕がある人と、余裕がなくなるほど辛い人の対比にもなっているのです。

基本的にシリアスですが、ギャグ回が定期的に入るためシリアスだけに偏らないのもポイントです。特にようやく名前がつけられた猫の活躍と、名前の由来はチェックしたいポイントです。理由を知っていると納得せざるを得ないだけでなく、何故そんなにいかつい名前になったかが良くわかるからです。他にも料理を通して志乃と希の距離が縮まるエピソードや、真面目に見える希が勉強をサボってしまったエピソードなど、キャラのイメージを広げる話も多くなっています。

丁寧に伏線を張り巡らせ回収していくような話ではないため、2巻から読んでも十分に楽しめるようになっています。逆に終わり方は次の巻が気になる形で終わっているため、3巻が欲しくなります。いずれにせよ、ギャグと心を刺すようなエピソード、サービスシーンのバランスがよく、非常に魅力的な作品になっています。萌えマンガ以外にストーリー性の高いマンガとして評価できるレベルであるため、性別を問わず他人にすすめやすいのも魅力と言えます。

オススメ度
★★★★★★★★★★ ★10

月10冊程度、年間100冊超の漫画を読むフリーライター。非定期で友人と百合漫画を語る会を開きますが、ジャンルは不問で何でも読みます。

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