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みなみけ(1) (ヤンマガKCスペシャル)

もう10年は前になるでしょうか、私はたまたま立ち寄った本屋で「みなみけ」というマンガが売られているのを見かけ、衝撃を受けたのを覚えています。

なぜならこの作品の作者は、私が当時大好きだった「今日の5の2」という作品を書いた桜庭コハル先生の最新作だったからです。今日の5の2の続編を今か今かと待っていた私は、桜庭コハル先生の最新作が今日の5の2とは全く別の作品だったことに少し落胆しつつも、期待を込めてその場でみなみけの1巻を購入しました。

するとこれが大ヒット!私はわずか数ページでみなみけの世界観に引き込まれ、今では完全なみなみけファンとなってしまいました。今回は、現在でも週間ヤングマガジンで連載されている人気マンガ「みなみけ」のレビューをさせていただきます。

あらすじ

みなみけという作品は、南家に住むハルカ、カナ、チアキの三姉妹の日常を描いた作品です。公式に「この物語は南家の三姉妹の平凡な日常を淡々と描くものです。過度な期待はしないでください」と公言されている通り、驚くほどに平和で何も起こらない世界観が特徴です。

両親が不在で長女のハルカが母親代わりを務めているということ以外は、本当に何の変哲もない三姉妹が日々生活を送る様が描かれています。長女のハルカ、次女のカナ、三女のチアキの三姉妹全員が主人公のような作品で、ジャンルはシュールなギャグマンガに分類されます。

これといって大きな謎もなく、倒すべき敵も居らず、ただ日本に住む個性的な三姉妹が織りなすストーリーにも関わらず、何故か不思議と引き込まれる作品です。

感想

とにかく南家の三姉妹が可愛い!

みなみけを読み始めた方の多くは、最初「絵柄の可愛さ」に引かれたという方も多いのではないでしょうか。私は前作の「今日の5の2」から桜庭コハル先生のファンだったため、みなみけに手を出したクチですが、そもそも今日の5の2を読みだしたきっかけは「絵柄の可愛さ」でした。マンガ家先生の中には絵は可愛いのに実際に読んでみるとストーリーが残念…という方も正直いらっしゃいますが、みなみけはストーリーを読んで、ますます三姉妹の可愛さに驚かされてしまいました。

無理やり考察するなら、「南家にはどうして両親が居ないのか?」という疑問がありますが、それ以外には特に不穏なことは起こりません。まず1巻に収録されている第1話、記念すべき最初のエピソードからして「ホットケーキにしましょう」というサブタイトルで、ただ三姉妹がホットケーキ談義に花を咲かせるだけのものです。みなみけ1巻は基本的にこのような深い意味の無い日常的な暮らしが描かれるだけで進んでいきます。大きな謎も、倒すべき敵もいません。少年漫画のようなドキドキとワクワクを求めてこの作品を読むと拍子抜けしてしまうことでしょう。

みなみけのストーリーを読み込んで得られるのは、興奮や感動ではなく「癒し」です。ハルカ、カナ、チアキの三姉妹の暮らしをぼーっと眺めていれば、日々の疲れもとれるというものです。みなみけは、小難しいことを考えずにぼーっと読めるのが良いところだと思います。世に「日常系」というジャンルの概念を広めるきっかけとなった作品だけあって、日常系マンガとしての完成度はとても高いです。

三姉妹に恋をした男子キャラたちの不遇さ

みなみけは、いわゆる「萌え系マンガ」として扱われることも多いのですが、それにしては恋愛の描写が少ないのも特徴です。1巻では、三姉妹それぞれに恋をする男子キャラクターが登場するのですが、1巻終了時までには誰ひとりとして恋愛に発展していません。それどころか、男子キャラクター全員がちょっと不遇な思いをするのが面白いです。

まず、ハルカに恋をしたのは同じ高校の保坂先輩です。保坂先輩は男前で性格も良いのですが、ちょっと空気の読めない一面があり、周囲からは「変態」だとか「きもちわるい」だとか言われてしまうキャラクターです。ハルカとお近づきになるために短時間でプロ並みの調理技術を身に着け、手作り弁当をもって来るなどの努力を重ねますが、結局ほとんど会話することも出来ていません。カナに恋をしたのは、同じ学校のサッカー部に所属する藤岡。藤岡は男子キャラの中で唯一カナにちゃんとラブレターを渡して想いを伝えますが、一世一代の告白は失敗に終わります。詳しくは後述しますが、藤岡はカナから恋愛対象ではなく「番長」として扱われてしまうのです。

そしてチアキに恋をしているのが小学生のマコトくん。彼が最も不遇というか…説明が難しいので詳しくは1巻を読んでいただければと思いますが、マコトくんは当分「男の娘」として暮らします。恋愛対象どころか、異性として認識してもらえないという…マコちゃんの恋愛が成就するのは当分先になりそうです。このように、三姉妹には特定の異性がいるにも関わらず、1巻では特に進展がありません。今後どのような恋愛模様があるのか…と期待して待ちましょう。

カナがラブレターをもらう話は今後に繋がる重要なエピソード

みなみけ1巻に収録されているなかで名エピソードだと思うのが第2話の「お手紙」です。次女のカナがラブレターを貰うというストーリーなのですが、これが今後の展開にも大きく関わる重要なエピソードなんです。カナにラブレターを送ったのが藤岡という少年。彼は純粋にカナに恋をしてラブレターをおくったのですが、これが思わぬ展開を引き起こします。初めてラブレターを貰ってテンパったカナは、とりあえずラブレターをハルカとチアキに見せます。

このとき、面白がったチアキが「ラブレターじゃなくて果たし状なのでは?」という考察を始め、カナはそれを真に受けてしまいます。翌日、藤岡を「番長」として認識してしまったカナは、告白の返事ではなくタイマンを張るテンションで藤岡と向き合うのです。このことがきっかけで、せっかく告白した藤岡くんは恋愛対象として見られなくなってしまいました。しかし恋愛対象ではなくライバルと認識されたことで、藤岡くんは頻繁に南家に出入りする立場を得ます。結果オーライというかなんというか…1巻では、その後も数回のエピソードに藤岡くんが登場します。

三姉妹が主人公なら、藤岡くんは影の主人公…いや、ヒロインのような立ち回りを見せることになります。藤岡くんは2巻以降もずっと登場する重要キャラクターとなりますので、第2話の初登場は必見です。こうして読んでみると、藤岡くん初登場の第2話は、ホットケーキを焼いていただけの第1話よりよっぽど初回っぽくも見えます。これは私の個人的な見解ですが、第1話「ホットケーキにしましょう」はプロローグのようなもので、第2話が本当の初回のような役割を担っているのではないでしょうか。

まとめ

みなみけ1巻は、癒しを求める方に是非おすすめしたい作品です。どういうところがおすすめなの?と聞かれても「なんとなく面白い」としか言えませんが、そんな具体性の無さがみなみけという作品の良さだからそれで良いと思うのです。ドキドキハラハラするような展開はありませんが、安心してストレスなく読めるので休日にゆったりと読んでいただきたいと思います。

個人的に1巻でおすすめのエピソードは、第2話の「お手紙」、第6話の「点で勝負」、第16話の「脱ぎたくない」です。どれも三姉妹それぞれの掛け合いというか、セリフ回しが絶妙でクスッと笑ってしまうエピソードですよ。1巻のエピソードを通して注目したいのは、カナに恋をする藤岡くんの立ち位置がどのように変化していくかということです。最初はカナとほとんど会話したことも無かった藤岡くんが、ラブレターをおくったことで番長認定され、それから何故か家族ぐるみの付き合いになっていく様子は必見です。

普通のマンガなら、番長認定された時点でひと悶着もふた悶着もありそうなものですけどね。みなみけの場合は、特に大きなトラブルも無く親密度が増していきます。…まぁなかなか恋愛にまでは発展しないのですが。というわけで、今回はみなみけ1巻のレビューをさせて頂きました。壮絶なバトルマンガに疲れてしまった方は、是非みなみけを読んでみてください。難しいことを考えずに読めるので癒されますし、日常系マンガの入門編としてもおすすめですよ。

オススメ度
★★★★★★★★★☆ ★9

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